レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)
UASF-BIP148の結果しだいでは、チェーンが2つに分岐することがあります。つまり、ビットコインが2つのコインに分裂します。
この様子をできるだけ平易に解説します。
まず、8月1日以降、マイナーは、次のどちらかのチェーンを選んで掘る必要があります。同時に2つは掘ることはできません。
- BIP148チェーンーBIP148ブロック
- レガシーチェーンーレガシーブロック
BIP148のチェーンでは、Segwitシグナリングのついたブロックのみを有効と判定します。レガシーチェーンとは、いままでどおりのビットコインのチェーンのことです。
このとき、ハッシュパワーの状況により、3つのシナリオがあります。
- レガシーチェーン(51%) > BIP148チェーン
- BIP148チェーン(51%) > レガシーチェーン
- レガシーチェーン = BIP148チェーン (拮抗)
それぞれに起こることがちがいますので、ケース別に解説しましょう。
レガシーチェーン>BIP148チェーン
BIP148のチェーンは一定のハッシュパワーの支持を得てチェーンを伸ばしますが、Legacyチェーンのほうがハッシュパワーが大きく(>51%)、チェーンが長くなる状況です。
この場合、チェーンは2つに分岐したままになり、コインが2つに分裂します。
この状態で発生したTxは、2つのチェーンに同時にブロードキャストされますが、独立してConfirmされます。ですので、txが取り込まれるブロックが異なることが起きます。
問題は、新規に発行されるコインです。これは、チェーン毎に別々の新規コインが生まれます。コインの総数が2つのチェーンの間で異なることになります。
Legacyチェーンのほうがハッシュパワーが大きいままでは、チェーンは永続的に分岐します。
このシナリオが終焉する場合は2つのケースがあります。
- BIP148チェーンのハッシュレートがゼロになり、事実上消滅する
- BIP148チェーンのハッシュレートが51%になり、レガシーチェーンを上回る
です。前者の場合は明白として、後者の場合は、特殊なことがおこります。チェーンの再編成です。
BIP148チェーン>レガシーチェーン
分岐後に、BIP148チェーンのハッシュパワーが増して、どこかの時点でレガシーチェーンを追い越したとしましょう。
その場合、「チェーンの再編成(re-org)」が起こります。これがおこると、レガシーチェーンが、文字通り消えてなくなります。
- 分岐後に行われたレガシーTxはすべてなかったものとされる
- 更に悪いことに、分岐後に新規採掘されたレガシーコインは消失する
となります。これは分岐後にどれだけレガシーチェーンが積み上がったとしても、BIP148チェーンに追い越された瞬間に、過去のすべてが覆ります。
このような事態が仮に起きた場合、レガシーチェーンを掘り続けるマイナーはもはや居ないでしょう。ハッシュパワーは急速にBIP148チェーンのほうに移動します。
なお、レガシーチェーンが再編成を防ぐためには、レガシーチェーンによるハードフォークが必要になります。
ちなみに、現在でも、チェーンの分岐と再編成は頻繁におきています。2名のマイナーが同時にブロックを発見することはよくあり、その場合チェーンが2つに分岐しています。しかし次のブロックでそれは解消されて、分岐は消失します。たかだか1ブロックしか分岐・再編成されないので、この間だけ待てばよいのです。
BIP148チェーン=レガシーチェーン
これはほとんどありえない事態ですが、仮にBIP148チェーンとレガシーチェーンのハッシュパワーがほぼ同じで拮抗するという状況になったとします。
すると、チェーンの状態は著しく不安定になります。まず、頻繁にBIP148チェーンがレガシーチェーンを追い越し、そのたびに再編成が起こります。再編成がおこったあと、再びレガシーチェーンが掘り始められれば、再びチェーンが2つに分岐しますが、またどこかの時点で再編が起こります。
理論的にはこのようなことが想定されますが、実際には起こりません。頻繁に消えてなくなるレガシーチェーンを掘ることはされないからです。
再編成について
さて、ここまで読まれたかたのなかにはある疑問が湧いて当然だとおもいます。
- なぜ、再編成がレガシーチェン側のみに起こるのか?
です。これが、BIP148の肝であり、理解の要です。
まず、ビットコインでは「チェーンが分岐した場合、長い方のチェーンを有効なものとする」というルールがあります。これにより、再編成が起こります。
長いチェーンの認識が、それぞれのチェーンで違うのです。
まずレガシーチェーンのノードからみると、プロトコルのルールではSegwitシグナルがついているかついていないかは何の影響も及ぼさないので、レガシーチェーンだろうが、BIP148チェーンだろうが、どちらも有効なビットコインのブロックであり、チェーンです。ですから、長いほうのチェーンを「正当」とみなします。
一方BIP-148のノードからみると、有効なブロックはSegwitシグナルブロックのみであり、レガシーブロックは無効なブロックというルールです。ですから、無効なブロックやチェーンがいくら長くなろうが、それは初めから無効であるので、それに再編成されることはありません。
もう少しいい方をかえると、BIP148チェーンは「ソフトフォーク」であるから、といえます。ソフトフォークは「ルールをより厳格にする」というルール変更になります。つまり、Segwit以外のブロックは不正とみなす、という厳格化ということです。これにより、BIP148チェーンでの再編成のリスクはありません。
もし、レガシーチェーンが再編成リスクを取り除こうとすると、レガシーチェーン側はいままでのビットコインとの互換性を断ち切る仕様に変更する必要があります。つまり、ハードフォークです。
まとめ
以上のことから、8.1のシナリオは次になります。
- 8.1以前に、BIP148のハッシュパワーが51%以上ならば、そもそもチェーンは分岐せず、8.1以降、全員がBIP148を掘る
- 8.1以前に、BIP148のマイナーがまったく居なかった場合、BIP148は掘られずにUASFは終了する
- 8.1以降、ハッシュパワーが割れていた場合、
- レガシーチェーンのパワーが大きい場合は、チェーンが分岐し永続する
- どこかの時点で、BIP148チェーンがレガシーチェーンを追い越した場合、再編成が起こり、BIP148チェーンが残る
となります。
・おしらせ
ビットコイン研究所の有料版サロンでは、平易な言葉で最近の技術や業界事情などについて解説するレポートを毎週配信しています。
暗号通貨について、もっと知りたい、勉強をしたいというかたに情報を提供しています。サロン内では疑問点も質問できます。
一度登録いただけると100本以上の過去レポートが読み放題で、大変お得です。レポート一覧がこちらのページありますので、よろしければいちど目をとおしてみてください。