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PoWコインだけが本物の貨幣になり得る理由

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PoWのコインだけが本物の貨幣になりえます。

ここでいう「本物の貨幣」とは実物貨幣のことです。つまり、それそのものに価値があるとみなされるゴールドやシルバーなどの貨幣のことです。

一方、信用貨幣とよばれるものがあります。政府紙幣がその代表で、紙だろうが、なんだろうが人々が信じれば貨幣として使うことが可能です。(なんだったら、牛乳瓶の蓋ですら、小学校の教室では貨幣のように流通することもできるのです)。

このエントリでは、唯一PoWのコインだけが本物の貨幣になりうるという話をします。

これを裏返すと、PoWに消費された電気代がコインの価値の源泉であるということになりますが、なかなか理解されていません。

今回は長くなりますが、そのロジックを丁寧に説明しようとおもいます。

(以下、お金、貨幣といったとき、実物貨幣のことを指し、信用貨幣のことではないことに注意しながら読み進めて下さい。それを混同すると全体が理解できません)

まずは、基本のところから

  • コインの価値が消費したコストにあるわけがないだろ!
  • コインの価値は、欲しいとおもうひとがどれだけいるのかが本質の価値でしょ!

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はい。そのとおりです。コインの価値というのは、需要によって決まります。そのコインを欲しいと思うひとがどれだけいるか、というのが価値の根幹をなしていることは間違いないです。ではその需要はどこからうまれるか?

経済学でいうと、コインに「効用」があるからという言葉になるでしょう。なんらかの効用があるから、それに対する需要が生まれるということです。

じゃあ、暗号通貨における「効用」ってなんでしょううか?

先を読む前に5分考えて、あなたなりの答えができたら、先にすすんでください。

私の回答を述べると、暗号通貨の効用は大きく2つあります。

1つめは、実用性に対する効用。2つ目はあとで説明する特殊な効用です。

実用性にたいする効用とは、そのブロックチェーンが提供するサービスを利用してえられる便利さといったものです。

たとえば、Fileコインというのは、そのコインを持っている人にネットワークストレージが提供されます。他の例をあげると、ネットワーク上で公証が得られるようなチェーンがあったとしましょう。この公証は便利なものですから、公証を利用したいという需要が発生します。それが実需になり、需要と供給の一致するところがコインの理論価格になるでしょう。

イーサリアムは、どうでしょうか。つきつめて考えると、これはブロックチェーン上の汎用コンピュータです。このコンピュータ上でプログラム(コントラクト)を処理してもらうと便利なので、ETHというGasを支払い、それのニーズが価格に反映されます。

これらを「実用コイン」とでも名づけましょうか。

実用により実需が生まれるというのは。わかりやすい。そして、多くのPOS系のコインには、実用として便利ないろいろな機能がたくさんあることが特徴だといえます。逆の言い方をすると、POSである限り、なにか実用サービスを提供しないかぎり、価値を証明できないからです。

仮に、何らの実用サービスも提供しない純粋な通貨としての機能を提供するPOSコインがあったとしましょう。そのとき、人々はなぜこのコインを欲しいと思う需要が出るといえるのでしょうか?タダでゼロから生み出され、持ってるだけで配当のように増え、なんの実用性のない電子データになぜ、実需が発生するのでしょうか?これに答えられるひとがいたら、ぜひおねがいします。

次に、2つめの、「特殊な需要」について話します。

PoWコインだけは、なんの具体的な提供サービスがなくても、たんなるコインそのものだけであっても、人々がこれを欲しいとおもう実需が生まれる可能性があります。

それは、「富の量を示すことができる」という特殊な需要です。

ゴールドの価値はどこから生まれるのか?という話をします。多くの人は、ゴールドは装飾品として綺麗だからという実用の需要があると誤解しています。つまり、ゴールドを実用コインとして見てしまっているわけです。

しかし、よく考えると、ゴールドは決して装飾品として綺麗なわけではなく、どちらかというと装飾品でいうと、ダイヤモンドやプラチナといたほうが綺麗ですし、実際にも装飾品としての需要はそれらのほうが多いでしょう。ですから、それだけではゴールドに発生している需要を説明しきれません。

私が聞いた説のなかで一番しっくりくるのは、ゴールドの効用とは、「富の量を示す」という効用だということです。

ゴールドは2つの重要な性質があります

  • 他の貴金属から作りだすことができない
  • 作り出す(掘り出す)のにコストがかかり、そのコストはほぼ誰がやっても似たようなものであることが共有されている

という点です。この2つは大事です。前者の性質によって供給の上限があることが分かります。ふたつ目の性質は、ダイヤモンドのようにどこかの会社が意図的に供給やコストをコントロールしているわけではないということを言っています。

この2つの性質が多くの人に知られていて常識になっているからこそ、ゴールドには富の量を示す効用があります。

ある人物が牛の大きさもあろうというゴールドを持っていれば、彼はそれをコストをかけて採掘できる莫大な富をもったひとであったか、もしくはそれを他人から買うことのできるほどの富をもったひとかのどちらかです。それ以外の方法でゴールドを作り出すことはできないからです。

古代からゴールドは富の象徴とされていましたが、ゴールドが示したのは、そのゴールドの入手において、ズルができず、誰もが一定のコストを強要されるという1点の理由において、富を誇示する道具として使うことができたからです。だから、古代の人はもっぱらゴールドを好んだのです。

ヤップ島の石のお金も実は一緒です。あれは大きすぎて移動もできず、単に名義人がかわるだけでした。実用性はゼロですし、綺麗でもありません。ヤップでは石は取れず、500km離れたパラオから運んだそうです。石の切り出しには何ヶ月も掛かり、航海は危険で死人がでました。困難の度合いが高いほど値打ちがあるとされました。つまり、この石の本質はなにかというと、このような困難なことを命令できる権力や富の証拠なのです。ヤップの石には、富の量を示すという目的があったのです。

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ここまでお読みになれば、なぜPoWコインだけが、富を示すという特殊な効用を持っているのかが理解できるはずです。

PoWコインは、マイニングにコストがかかります。そして、マイニングは、決してズルができず、電気を消費することによってしか採掘できないということが、暗号学によって誰の目にも明らかに証明できているので、これを手にすることが、富の証明になります。マイニングにコストがかかるという理由により、PoWコインには富の証明としての需要が発生する可能性が生じるのです。

こう言うと、原価が多くかかっていればそれだけ価値が出るなんてあり得ないと反論を多く聞きます。100時間労働してつくったイラストが、1時間で出来たイラストより100倍の価値があるわけではない。そのとおりです、イラストには明確な実用性があるから、効用は、その実用性で判断されてしまいます。

同じく、生産に1万円かかったりんごは、1万円の価値があるか?そんなわけがありあせん。りんごには食品としての明確な実用性があるので、その実用性を超えて需要はつきません。

ゴールドには、価値を誇示する以外の実用性はほとんどありません(先ほどいったように実は装飾の実需はそれほど多くありません)

PoWを採用するコインは、(送金できることを除いては)一切の実用的な価値がないのが普通です。そのブロックチェーンは多機能ではなく、便利なサービスはありません。なぜなら、そうした付加サービスを提供してしまえば、その実用性の評価額よりマイングコストのほうが高いという困ったことになってしまうからです。

PoWのコインは、一切の実用性がなく、掘り出すことにコストがかかる、ということをもって、「富の量を示す」という非常に特殊な効用・需要を発生させているのです。

そして、その需要と、供給が一致する、つまりその価格は理論上は1点で、長期的には、採掘の限界費用(マイニングコスト)と一定します。つまり新規コインの発行は時価で行われる。これがPoWの力学です。

最後にまとめます。

  • POS=富の量を示すことによって得られる効用を示せない。そのブロックチェーンが何かの実用サービスを提供し、その利用料としての実需のみが正当化できる。つまり石油にはなるが、貨幣には成り得ない。
  • POW=富の量を示すことによって得られる効用が存在する。なぜなら入手にコストがかかるから(マイニング)。

私は無闇にPOSコインをDisっているわけではありません。実用サービスを提供するブロックチェーンなら、速度やエコなPOSのほうがマッチしており、効率が良いことは異論はございません。

なお、富の量を示すことは、富の貯蔵として機能することとイコールであることを最後に付け加えておきます。

以上です。

なお、ここまで読んでもわからない場合や、紙だって貨幣になるんだからそれにいくらかかっているかは関係ないだろう、と思われるかたは、信用貨幣と実物貨幣をごっちゃにしていますので、そのあたりをまずググッてみてからもう一度お読み下さい。

反論などありましたら、ツイッターなどでどうぞ。

(追記)

  1. なんども繰り返しますが、牛乳瓶の蓋も、貝殻も、すべての物が人々がそれを交換手段に使うと取り決めたり、信じることができれば、貨幣として交換に利用できます。しかし、牛乳瓶の蓋を貨幣として使うのは悪貨です。良貨は何かといえば、ゴールドで、ビットコインはゴールドに次ぐ良貨です。
  2. 政府紙幣は貨幣なのに原価が安いじゃないかという反論がよくあります。私は政府紙幣はScamだと思っております。念の為。政府貨幣は、発行量も上限がなく、原価はほぼゼロで発行されます。上限のないPOSコインのようなものです。しかし、これに価値があるのは、法律や国の枠内で、使用が強制されているからです。つあり、政府紙幣は悪貨の代表です。
  3. PoWコインに本当に「実用性」はないのでしょうか。実はあります。送金ができるという実用です。これに対しては、「送金手数料」という実用対価を皆さん払っています。しかし送金手数料の総額だけでは、コインの価格に一致しないのは言うまでもありません。当初は、PoWの電気代が価値に占める部分が大きいのです。将来的に新規に発行されるコインが減っていき、ついに採掘されない状況になった場合はどうなるでしょうか?手数料の総額=マイニングコストとならざる得ません。つまり、実用性=マイニングコストになるのです。PoWで最初に数が限定され価値のあるものを積み上げていき、長期的に信頼とブランド、ネットワーク効果を十分に構築したのち、それを移転できるという利便性をもって、最終的に実用的なコインにしていくというのは実によく出来た設計です。
  4. 仮にビットコインの価格が100倍になったら、マイニングコストも100倍になるわけで、そうしたら地球がもたないのでは?おっしゃるとおりです。なので、4年に一回、新規コインの発行量が1/2になる半減期が訪れます。これにより、電気代の総量を変えずに、コインあたりの発行単価を2倍にすることができます。実によく出来た設計です。

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