ブロックチェーンの定義(とそれがバラバラになっている理由)

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインを解説ビットコイン研究所

レポート「ビットコインの情報源決定版(26ページ)」を配信しました。レポート内容へ

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ブロックチェーンとは何のことをいうのか?ブロックチェーンの定義や、特徴といったものはなにか?

何名かのかたが、ブロックチェーンとは?という定義を試んでいるように思いますが、統一した定義のようなものはまだなされていないように思います。

各自の意見はかなりバラバラで、捉え方も多様です。他の業界からみると、混乱しているようにも思えるのですが、なぜこのように定義ですらバラバラになってしまっているのでしょうか?

その理由について、一つの考察を提示します。

ナカモトサトシの意図

ナカモトサトシがビットコインを発明した時、どこに新規性があったかというと、明らかにPowプロトコルの部分です[1]。つまり、インターネットのように不特定多数のコンピュータが自由に参加できる状況のなかでも、中央の管理者なしに、ネットワークの合意を得ることができるというプロトコルです。

ナカモトサトシは、ビットコインという具体的なものを作るにあたり、10分毎にトランザクションをまとめたり、ブロック状で管理したり、ハッシュポインタ[2]やマークルツリーで取引をつなげるといった実装を取りましたが、ナカモトサトシがやりたかったことはブロック構造ではなく、管理者を廃した合意システムにあったはずです。

これがビットコインの発明の根幹であって、それ以上でもそれ以下でもありません。ビットコイン以降に生まれた、他のパブリックなチェーンにおいても、管理者を排除したかたちで○○ができるといった、分散性に力点がおかれていることからも明らかとおもいます。

たとえば、イーサリアムにしても、「中央制御のない止められないコンピュータ」という点が新しいのであって、チューリング完全ヴァーチャルマシンが新しいのではありません。新規性は、中央を排除したところに存在しています。

パブリックチェーンの定義

といった点から鑑みまして、(パブリックな、元々の)ブロックチェーンというのは、

「インターネットなどの制限を設けないP2P環境において、中央管理者がいなくても、(確率的に)ネットワークの合意が形成できるプロトコルと実装であって、(コイン及び経済的インセンティブを設けることにより)実用的な範囲でこれを実現している」

と記述できます。

管理者の再導入と、目的の入れ替わり

さて、そのあとプライベートなチェーンが登場します。つまり、金融機関などが現在実証実験を行っているような、ブロックチェーンです。

これらのチェーンでは、御存知の通り再び管理者を導入しています。ビットコインのブロックチェーンの最大の発明が、管理者が不要の合意形成というところにあるとすれば、そこに管理者を再導入してしまうと、ブロックチェーンでは無くなってしまうように考えられます。プライベートチェーンは、パブリックチェーンのイントラ版であるいう説明はこの点で鑑みると不可思議です。

しかしながら、プライベートチェーンは別の目的を持ちました。むしろ実装上の工夫からもたらされる特徴である、改ざんの検出や、可用性、コストを抑えることができる点に注目したのです[3]。

トランザクション毎に電子署名が付与され、マークルツリー、ハッシュポインタ、ブロック構造といったデータの構造は、改ざんが合った場合、検出が容易です。

また、トランザクションの時刻を厳密に管理しないといった曖昧さを許容することで、落ちにくいという性質を有するようになりました。高機能のサーバーでなくても処理ができ、ネットワークの構築コストも下がります。

要するに、プライベートチェーンというのは、改ざん検証や、可用性、低コストといった、実装の工夫のほうに注目しているものであると考えられます。

ブロックチェーンが、ビットコインのものから、プライベート型になるにつれて、チェーン目的が変わってきているのです。

プライベートチェーンの目的

これをまとめると、プライベートチェーンの定義(特徴)というのは、

「(電子署名、ハッシュポインタ、マークルツリー、ブロック構造などを取り入れることで)、改ざん検出や可用性、低コストという特徴を付与した分散データベースシステム」

ということになります。[4]

これを図解したのが冒頭の図です。当初は中本サトシの論文のPOWから始まりますが、次にPoWが抜き去られ、実装上のブロック構造などの部分が、プライベートチェーンになっていく様子です。

本記事の重要な指摘は、ここにあります。

要求仕様の違い

つまり、見た目や実装は似ている部分があるものの、目的論でいえば、パブリックチェーンとプライベートチェーンでは、解決しようとしている問題が全く別であり、つまり、「要求仕様」が異なるということになります。

ブロックチェーンの定義といったとき、パブリック、プライベート、どちらの要求仕様にたって言っているのかによって、当然定義や特徴も異なってきます。これが定義などがバラバラである要因であるとともに、用語の統一が難しい背景になっているものと思われます。2つの目的が違うものを1つの言葉で定義をすることは難しいと思われるからです。

2つのチェーンは目的が全く異なるものですから、明らかに区別して議論、または定義したほうが生産的です。単に「ブロックチェーン」と言わずに、冒頭に「パブリック」または「プライベート」を付加し、どちらの文脈で語っているのかを明示することで、見通しがよくなり、良いコミュニケーションが図れるようになることを推奨したいと思います。

[1]Pow自体は、Adam Backのハッシュ・キャッシュで提示された概念で、正確に言うと、Powに経済インセンティブと組み合わせたことが、ナカモトサトシのコロンブスのタマゴ的な発明と考えられます。

[2]前のデータの代表ハッシュを次のデータに取り込むことで改ざん耐性を行う方式は、ヒステリス署名といわれています。

[3]ブロックチェーンの衝撃(日経BP社)において朝山貴生氏がこの3点を特徴として指摘しています

[4]トランザクションの処理構造上、厳密にタイムスタンプを取れない、トランザクションの発生順序と、ブロック上での順序が一致しないといったことをもって、データベースとしての要件をなしていないといった指摘もありますが、ここではコンピュータ科学のタームというより、一般的な用語として使っていることを了解ねがいます。

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