アクセンチュアが開発−編集できるブロックチェーンは是か非か?

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ここ最近で一番おもしろかったニュースは、

アクセンチュア、編集できるブロックチェーンを開発

だったとおもいます。

是か非か?各方面から意見があがっていますが、多くは、「冗談だろう?」「ブロックチェーンの意味がない」といった否定的なものです。

私は、意外と思われるかもしれませんが、これはこれで有りではないかという意見です。

ただし、有り無しそのものよりも、この話は、「プライベートチェーンでは同じ技術を用いながらも達成したい目的が違ってきている」という好例だと考えるのです。

ブロック構造

一般的なブロック構造においては、前のデータのハッシュ値をとってそれをつなげていくことで、ハッシュの連鎖をつくります。これがブロック「チェーン」の言われであって、過去のデータに一箇所でも改ざんがあれば、それ以降のハッシュについても変更されてしまうため、改ざんができないということになっているかとおもいます。

カメレオンハッシュ

アクセンチュアのチェーンでは、管理者が過去のデータを変更できるという機能を開発しているようです。一般的には、過去のデータを変更すると、ハッシュ値もすべて変わってしまいますから、再計算をしないと、ブロック構造が保たれません。

アクセンチュアのチェーンでは、そのようなことをしなくてもブロックの接続関係が保たれるような「カメレオンハッシュ」という技術を開発しているのだといいます。

immutabilityは必要か?

確かに、パブリックなブロックチェーンにおいては、改ざんができない、変更ができない(immutability)というのは、最も大事な性質であるとおもいます。immutabilityが無いと、管理者がいないパブリックなチェーンとしては機能しないからです。

しかしながら、プライベートなチェーンでは、immutabilityというのはそんなに大事な性質でしょうか。どうやら、そうではないように思います。

すでにプライベートチェーンを志向する時点で、ブロックチェーンにたいする要求仕様が、パブリックなものとは変化しています。

パブリックなものは、不特定多数による合意や、immutabilityの維持といったものが主眼ですが、プライベートなものは、むしろ、電子署名によるアクセスのコントロールや、ノード分散による可用性、コストの低減、改ざんの検出といったところに目的が移っていて、かならずしもデータのimmutabilityは大事ではないようにおもいます。(この議論は、「ブロックチェーンの定義とそれがバラバラな理由」で書きました)。

管理者による修正は必須機能

そもそもプラベートチェーンにおいては、管理者を再導入するわけですから、管理者にチェーンの変更権限があると理解するのが妥当です。なにか問題がおきたら、チェーンのデータを書き換えて、不都合を解消するというのは想定できる事態です。またそれが出来なくては、プライベートにおいては運用できないと思います。

例えば、システムのバグなどでデータが整合性取れなくなった場合や、最悪の場合ハッキングにあって問題が起きた場合、もしくは間違った送金を訂正したり、犯罪にかかわる資金があった場合凍結するなど、チェーン自体への積極的な関与が考えられます。

つまり、DAOのような事態が起きた場合、管理者の権限一発で、ハードフォークのようなことを行って、すばやくリカバーできるというのは必須の要件と考えられます。

そう捉えますと、プライベートチェーンにとっては、immutabilityよりも、改ざんが検出できるほうが大事です。チェーン構造は改ざん検出が一発でわかりますから、この特性はありがたいわけです。問題が起きた時には瞬時にわかること。そしてそれを管理者がすばやく修正できること。

そう考えますと、編集できるブロックチェーンというのはさほどおかしくないというのが私の感触です。

この議論からもわかるように、プラベートチェーンとパブリックなチェーンは、同じ技術を用いながらも、その達成したい目的がまるで違うということが浮き彫りになっているとおもいます。

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