どうやってプロトコルがマネタイズするのかーレイルウェイ・モデル・マネタイゼーションとは?

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きDAppsについて書く。今回は、どうやってDAppsがマネタイズするかについてだ。

分散型で、中央の主体がなく、自動的に動く仕組みでは、従来の資本主義のように、余剰を取る人がいない*。

ビットコインなどの非中央集権のアプリケーションは、どうやってマネタイズするのか。どうやって儲けるのか?だれがその開発費用をだしていくのか?

この疑問に答えるのが、この記事である。

DAppsでは、従来の資本主義のように、株主が上前を撥ねる仕組みがない。たとえばビットコインは、ビットコインの開発コミュニティによって開発がなされているが、かれらは、採掘されたビットコインの上前を跳ねている居るわけではない。ビットコインはオープンソースであり、誰もが参加でき、管理者はいない。

では、このようなオープンソースのDAppsプロジェクトがどうやって儲けるのか?

DAppsのマネタイズは、従来のマネタイズとは、大きく異なる考え方が必要だ。DAppsのマネタイズの考え方を、

レイルウェイ・モデル・マネタイゼーション(鉄道マネタイズ)」という。

DAppsのマネタイズの仕組みは、鉄道になぞらえることができる。

鉄道会社は、鉄道自体を引くことで儲けることはしない。ただ、未開の地にレールを引き、交通が発達することで、その周辺に経済効果をもたらすことができる。1800年台に、アメリカに鉄道がひかれたように。

未開のアメリカ大陸に、レールが引かれることにより、そこに人が住むようになり、物流ができ、工場が生まれ、仕事でき、町ができて、さらにその鉄道に依拠したサービスやインフラが生まれる。未開だった土地の価値が上がる。

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鉄道会社は、鉄道によって直接儲ける必要はなく、鉄道の周りの土地を保有しておけばよい。日本の私鉄でも、たとえば田園調布といった町並みは、鉄道会社によって開発された。鉄道と、街の開発をセットで行う手法は、一般に知られており、これをDAppsになぞらえる。

つまり、DApps自体は、鉄道のレールに相当するものだ。そして、土地に相当するものが、DAppsのトークンである。もっと平たい言い方をすれば、ビットコインの仕組みが鉄道のレールに相当し、ビットコイン(BTC)そのものが土地に相当する。

ビットコインという仕組に、多くの人が参入し、ビットコインをベースとしたサービスがどんどんうまれていけばいくほど、ビットコインの仕組みの利便性は高まる。第三者がビットコインの仕組みの周りに、勝手に住み始めて街をつくっていくようなものだ。

多くのサードパーティーが参加して、多くのひとがビットコインを採用することで、ある種のネットワーク効果が働く。

そして、その時に、そのトークンであるビットコインそのもの(BTC)の価値は、長期的に上がっていくはずだ。

ビットコインで利益を得たい人は、ビットコインを保有したうえで、ビットコインの価値を高めるべく、コミュニティに貢献すればよい。

ビットコインの開発に参加してもいいし、普及に参加してもいいし、ビットコイン関連ビジネスを始めてもいいし、単純にビットコインでたくさん取引をしてもいい。その活動が、多く積み重なればなるほど、ネットワーク効果がはたらき、ビットコインの長期的な値段があがることで、その活動が還元される。

これが、DAppsにおけるマネタイズの方法だ。

DApps自体は儲けず、余剰を取らず、マネタイズの手段を持たないが、それが鉄道の役割を担うことで、その周辺に経済圏を生み出す。その経済圏で利用するトークンの長期的なキャピタル・ゲインによって、その経済圏に貢献した人々が長期的な利益を得る。

個人的には、この経済モデルは、すこぶる健全なように思える。

現在の資本主義では、資本家(株主)が、経営者や従業員を雇い、消費者は一方的に消費をおこない、生産の余剰(利益)を資本家が独占する。

DApps経済においては、資本家はおらず、全員がなんらかの形で、その経済圏の発展に協力し、コミットする。そしてその経済圏のトークンで長期的な報酬を得るので、ステークホルダーでアレばあるほど悪事を働くインセンティブがなくなる。生産は余剰を取られる代わりに、トークンを通してシェアされる。

資本主義は問題が多いが、かといって、中央集権による再配分(社会主義)に回帰してもそれは答えにならないだろう。私は、第三の道として、DApps経済の推進が、この問題を解決するかもしれないと考えている。

私が生きているうちには世界はガラリとかわることは無いと思うが、100年後200年後の未来から振り返って、物事を見るようにしている。共産主義の失敗におわり、資本主義の機能不全がピークに達した21世紀の初頭において、ビットコインが発明された意義はおそらく歴史に残るだろう。

<参考> 以前行った講義でのスライド添付します。

 

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