ブロックチェーンのレイヤーモデルについて

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)

ブロックチェーンはどのように進化していくのでしょうかか?その指針となるレイヤリングモデルについて、以前より先見の明のある投資家の間で議論されており、私も同様のモデルについて考えをまとめていたのですが、ようやくまとまったものが見えてきましたので、書いておきたいと思います。

インターネットは有名なOSIの7階層モデルがありますし、およそITのアーキテクチャというのは、なんらかの階層モデルで形成されているわけです。ブロックチェーンも同様に階層形式で技術が進展していくのではと考えています。

Screenshot from 2018-06-11 13-50-36

それぞれの階層を説明します

1.Blockchain(s)

これは、最も下のレイヤーで、基本的なコンセンサスを形成し、チェーンを維持する層です。ビットコインのメインチェーン、イーサリアムのチェーンほか、いま存在しているブロックチェーンはすべてこのレイヤーです。

PoW, PoSなどのコンセンサスプロトコルと、ブロックチェーンそのものがこの層になります。

Blockchainsと複数形で書いたのは、将来的には複数のブロックチェーンが相互接続してこの層に位置するからです。

2.Offchain Protocol

は、第一階層を拡大し、オフチェーンでのトランザクションを行うことができるようにした層です。

ビットコインでいうライトニングネットワークやサイドチェーン、イーサリアムでいうとRaidenや、Plazumaがこれに相当します。

3. Interoperability Protocol

オフチェーンのプロトコルが充実すると、それらの間を高速につないだりインタラクションを行う層の構築が容易になります。

これらのプロトコルを、インターオペラビリティ層とよびます。代表的には、DEXやAtomic Swapなどのコインのトラストレスな交換プロトコル。これはオフチェーンチャネルと組み合わさると絶大な効果を発揮します。

またチェーン間の相互運用を目指す、Cosmos, Porkadot, ILPなどのプロジェクトもこのレイヤーに相当します。

4. Smart Contract

スマートコントラクトは4番めの層になります。究極的には下位のチェーンを横断したり、下位のチェーンの仕様に依存しない形で、標準化したスマートコントラクトの記述が可能となるでしょう。つまりスマートコントラクトのVMの提供です。

5. Service Layer

これは、アプリケーション及び、スマートコントラクトにとって必要な外部入力や、外部インターフェイスや、計算処理機能を提供するレイヤーです。

例えば、価格フィードなどのオラクル、IPFSなどのP2Pストレージとのインターフェイス、秘匿計算などの外部計算機能などです。

Auger, Filecoin, Enigmaなどが具体例です。現在これらは単独で機能していますが、レイヤーの機能として、階層的な役割を提供するでしょう。また、分散型で個人を認証するようなID機能やレピュテーション機能などもこのレイヤーで提供されると考えられます。

6. Applications

最後はアプリケーション層です。アプリケーションは、レイヤリングモデルによってブロックチェーン間の差異が吸収されているため、複数コインや複数のブロックチェーンの機能を組み合わせてアプリケーションを構築できるようになるでしょう。

なぜレイヤーモデルが必要か?

なぜレイヤーモデルが必要なのでしょうか?なぜ一つのプラットフォームが、ひとつのチェーンですべての機能を提供するのではダメなのでしょうか?

現状のブロックチェーンにはいくつかの問題があります。まず代表的なものは、スケーラビリティです。すでにイーサリアムでは、処理やデータ量が爆発しており、メインのチェーンですべての処理を行うのは不可能と予測されます。何らかのオフチェーン処理が必要なのは明らかです。

次に、ブロックチェーンのアップデートです。現在は比較的容易にフォークができていますが、より多くの人が利用し、社会基盤としてクリティカルなところに利用されるようになると、多機能性よりも、より安全に、より確実に機能することが求められると考えられます。アップデートもバグの潜むような挑戦的なことは難しくなっていき、ベースレイヤーは、シンプルな機能に徹するでしょう。では、その代わりに、多機能性や、実験的な機能を提供するのは、上位のレイヤーでということになり、そのようなことができるようなアーキテクチャになっていくでしょう。

3つ目はチェーンの間での相互の運用がむずかしいことです。たとえば現在、マルチコイン対応のウォレットを作ろうとすると、それぞれのチェーンごとの別々の仕様をとりこみ、多くのインターフェイスをもった化物のようなウォレットができあがります。

アプリケーションが直接、下位の層にインターフェイスを取らないといけないため、ブラウザがOSを通さず直接CPUを制御しているような状態になっています。

Screenshot from 2018-06-11 14-21-17

さらに、チェーン間では相互に互換性がまったくなく、独立したチェーンが平行して存在しています。

アプリケーションはどれかのプラットフォームを選ぶ必要があり、一度そのプラットフォームで構築すると、他のコインを扱うことは難しいでしょう。

レイヤーモデルの利点

階層モデルはいくつかの利点がありますが、一番大きいのは抽象化です。あるレイヤーは、下のレイヤーの実装がどのようなものであれ、標準間されたプロトコルの規約にしたがって下のレイヤーと通信することで、何が行われているのかを気にするひつようがなくなります。プラットフォーム依存ではなくなり、複数のプラットフォームをまたいだり、どのプラットフォームでも機能するようなアプリケーションが構築できるでしょう。

将来的なクロスチェーンのウォレットは、個々のブロックチェーンに直接アクセスするのではなく、たとえばサイドチェーンや、ハードスプーンなどによって生まれたオフチェーンレイヤーを、抽象的なVMが制御し、その上で構築されることになるでしょう。これであれば、複数のコインを同じ仕様で制御し、交換することができるようになります。

また、レイヤー1より上の規約は、全員一致でなくても動きます。たとえば、オフチェーンプロトコルのライトニングネットワークでは、標準的な仕様はあるものの、それから外れた独自の機能をつけたしたところで、チェーンのコンセンサスが破綻したりということはありません。(レイヤー1でこれをやろうとすると全員一致でHFが必要になります)。

新機能はそれをサポートしているノードやアプリだけで利用できればよく、それが並列していくつあっても、齟齬はきたしません。つまり、並列していろいろな仕様の競争がうまれることになり、技術開発が加速度的に早くなっていくことでしょう。

投資の視点から

ベンチャーキャピタルのようなシード投資、またはコインの長期投資の視点から考えると、投資戦略は比較的シンプルになります。

これらのレイヤーモデルにおいて、各階層における主要な機能を提供し、デファクトとなるプロトコルを1つ2つづつ抑えておけばよいからです。そのようなプロトコルを見抜くのは難しいように見えますが、レイヤーで整理し、注意深く技術を観察すれば、決して難しくないでしょう。

今後

このレイヤーモデルは現時点のもので、日々アップデートが必要となりますが、それほど骨格は変わらないと考えています。

現在は、いままで存在しなかったレイヤー2〜3が作られつつあるフェーズであると認識しています。これの構築はまだ始まったばかりですが、あと3〜5年はかかるでしょう。

実用的なDappsが使われるレベルになるには、この基盤が成熟する必要があり、アプリケーションの登場はやや先になるとおもいます。

レイヤー1は、多機能よりもセキュリティや拡張性の開発に力を注ぐようになります。イーサリアムでいえば、POSへの移行やシャーディングといったことが最終的に残ったテーマです。ビットコインではSegwitを導入しレイヤー構築が可能になったので、今後はファンジビリティや、シュノア署名など、基本レベルの性能を地道に向上させていくことが方向性になりそうです。

レイヤー構造があるかぎり、すべてイーサリアムの独占にはならないと思っており、特色あるプラットフォームもニッチな部分で生き残るでしょう。

 

 

・おしらせ
ビットコイン研究所の有料版サロンでは、平易な言葉で最近の技術や業界事情などについて解説するレポートを毎週配信しています。

暗号通貨について、もっと知りたい、勉強をしたいというかたに情報を提供しています。サロン内では疑問点も質問できます。

一度登録いただけると100本以上の過去レポートが読み放題で、大変お得です。レポート一覧がこちらのページありますので、よろしければいちど目をとおしてみてください。
(詳細情報)

Ledger Nano S - The secure hardware wallet