2017年ビットコインの価格予想と主な論点

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)

あけましておめでとうございます。私のほうからも2017年のビットコインの価格と業界について予想を書きます。

なお、わかりやすいように「論点」と「予想」をわけました。私の予想は予想でしかないので、むしろ論点整理のほうを参考にしていただいて、それを元に、読者のみなさんのそれぞれの予想なり方針を組み立てるために利用いただけるほうが有用かと思います。

ビットコイン価格

昨年の年初に立てた2016年末の予想は980ドルでしたが、12月29日に最高値が980ドルをつけ、まさにピッタリあたりました。これには、自分でもびっくり。価格は、まぐれのところがありますが、今年はどうなるでしょうか?

まずは、2013年末につけた史上最多値の1200ドル付近を早期に超えてくるかが重要な論点となるでしょう。材料としては、スケーラビリティの進展、マイクロペイメントなどの新しい用途の開発などの技術的なファンダメンタルに加えて、アルゼンチンなどの通貨危機、インドを発端とするFiat不信、中国の資本逃避などの実需が加わるでしょう。

これに加えて、ETFが認可されるのかが、注目すべき論点になるでしょう。
アメリカは、依然として金融規制が厳しすぎ、投資家がCoinbaseでビットコインを買い上げるといったことができないように思います。(下手に新規で数BTC買うとそれだけでマネロンアルゴリズムにひっかかり口座を凍結されかねません)
そのためETFが重要で、これが上場されれば、今までとは違う資金の流入が期待できます。

また日本においても中心に規制の整備で、いままでにない資金の流入も期待されます。とくに法的な担保と会計制度の下にビットコインを購入できますから、上場企業も買うことができます。これは非常に大きい資金になります。

このような新しい資金の流れができた時、アップサイドがどのくらいあるのかは注目すべき論点です。

また、忘れられがちですが、マイナーの裾野の拡大が価格の維持には大切です。価格が大きく跳ね上がっても、マイニングに新規参入がありハッシュレートがあがり、マイニングコストが上昇しなければ、いずれマイニング原価まで叩き売られるでしょう。

中国以外の地域のプレイヤーがどれだけマイニングに参入してくるかといった動きも重要な論点になります。

【大石予想】

  • 2300ドル(15000人民元)
  • 基本強気で行きたいですが、諸々の問題がうまく解決せず失速した場合、1450ドルと予想しておきます。
  • マイニングにおいては、マイニングチップの技術革新がスローダウンし、中国以外のプレイヤーに参入がだんだんと見られるようになる。

スケーラビリティ、Segwit、Unlimited

引き続き、2017年もこの問題が議論になり続けるでしょう。

本来Segwitとブロックサイズの問題は切り分けるべきです。Segwitはトランザクション・マリアビリティを解決するなど、技術的に重要な改善なので、全員にとっての勝利です。希望は、中国のマイナーが一旦Segwitの技術的な利益を理解して早期に受け入れ、Segwitのアクティベートを待ちたく。まず全員がSegwitを受け入れてから、その後ブロックサイズの問題を議論すべきと私は考えています。

ただ、実情はSegwitが政治的駆け引きの材料になってしまっていて、アクティベートの道のりは険しく、最終的にアクティベートされない可能性が高いです。

Unlimitedは強硬に反対しており、またCoreも折れる感じではありません。私が互いの陣営の人と接した感触では、お互いへの不信感は相当に強く、感情的な溝は修復不可能なレベルで、楽観的な見通しは打ち砕かれていると実感しています。

現在、Core、Unlimitedともに中国のマイナーへの説明など、取り込みを行っているようですが、どちらもマジョリティに達さないことが明白で、いずれUnlimitedによるフォークもあり得ると思っています。その場合、ビットコインが2つのコインに分裂します。その事態を想定しておくのは決して用心し過ぎではないでしょう。

また暗号通貨へのコミットを表明したMITメディアラボなどの中立的な第三者が、コミュニティ内でどのような役回りを担い、たとえばスケーラビリティ問題の解決のためにどのような貢献ができるのかも、注目されます。

【大石予想】

  • 夏頃に1M + Segwitで決着(希望)
  • またはハッシュパワー30%程度でUnlimitedがフォークする可能性も否めない

規制

Coinbaseのユーザーが、オンラインカジノにビットコインを送ったところ、Coinbaseのアカウントごと凍結してコインが取り出せなくなったという話を聞きます。

現在米国の一部の会社による動きですが、こうした厳しい監視や規制が広がっていくのか、ビットコインは完全なコントロールの下でなければ利用できない方向性に向かうのか、ユーザーのプライバシーはどう確保されるのか、そういった点が論点になります。

プライバシーとFungibilityはビットコインコミュニティのなかでも中核テーマとして位置づけられましたが、どのような問題があるのか、どのような解決法があるのか、いずれも初期的な段階の議論がされている程度です。2017年にこれらの問題にどのような進展があるのかが注目されます。

また、日本においては、規制の施行の年であり、各業者がどのように対応するのかが注目されます。今回の施行令では、既存金融機関と同等の厳格なコンプライアンスが求められており、社内体制の構築と運用に億単位のコストがかかると考えられています。

そのため、スタートアップの多くが廃業するか、規制対象にならないソフトウェア開発などにピポットするでしょう。もしくは海外に脱出するスタートアップも出てくるとおもわれ、一時NY州で起こったことと同様の事柄が起ることも考えられます。規制のメリットと同時に、デメリット面もあるでしょう。

【大石予想】

  • 国内では規制によりスタートアップは激減、現在の数個の取引所がウォレットやICOなどすべてのサービスを提供する方向に集約化(取引所による寡占化)。
  • 既存FX業者がビットコインを一斉取り扱い。既存大手ネット企業によるサービス開発が進む。

技術

2017年はビットコインのマイクロペイメントなど、レイヤー2のプロトコルがどこまで実用化されるかが注目すべきです。
Ligitningは仕様が策定され実装がすすんでいますし、Tumblebit、Teechanなどのプロトコルの提案もあり、この分野がより競争的で、新しい人材が入ってくる事になるでしょう。
これらのペイメントプロトコルがどのくらい動いて、実用的になるのかは、多くが未知数ですが、これらによってビットコインの用途に新しい地平線が開くと考えられ、その際に、どのようなビジネスや、市場が生まれ、どのような将来像が描けるのかが論点になります。

またビットコインにおいては、Schnor署名のほか、MASTなど署名のアグリゲーションによるデータ圧縮技術が次第にスポットが当たると思います。実用化されるかはまだ先と思いますが、引き続きビットコイン界隈では、多くの技術的なアイデアが飛び交いそうで、これらの技術的な芽をどのように育み、コミュニティを活性化していくことができるかが、大きなテーマになります。

【大石予想】

  • Lightning、Sidechainはすぐには実用とは行かないが、着実な開発が進む。
  • Tumblebitを利用したコインミキシングサーバーが実現する。
  • Yoursがコンテンツ分野でMicoropayment Walletをリリースし話題に。Kim.comの新サービスが立ち上がる?
  • スケーリング・ビットコインが東京で開催される

アルトコイン・ICO

Ethereum、Zcashのあと、機能面においては、なかなか革新的なものが出にくくなっている状況にあるといえます。この状況のなかで、新規のコインを作ることがより難しくなる傾向にあります。Altcoinとしてはどのように新しい価値を創造していくかというのが、真剣に考えるべき論点になります。

ひとつの解としては、Augurなどを代表例とするアプリケーションの利益配当トークンとしての「株式型」のトークンが増えていくというシナリオがあり、そうなるのかどうかも注目です。
また、過去数年にわたって開発をしてきたDisk Share系のコインなど、いくつか実用化がみえているものがあるため、これらがどのくらいのインパクトを出すかが注目されます。
インターレジャー系のものやIot絡みのコインも観測されており、これらが新しい地平線を切り開けるのかどうかも注目です。

【大石予想】

  • 新技術をベースとしたコインを作るプロジェクトは減少。一方、通貨はBTCやETHを利用し、手数料の配当権をトークン化する、いわゆる「DAOの株式型」のプロジェクトが増える。
  • 既存コインのフォークや、技術的裏付けのないホワイトペーパーを、マーケティングで化粧して資金集めをするプロジェクトが増え、Scamまがいのものも横行。アルト全体への信頼が低下する。

イーサリアム

2017年は、PoSへの移行が想定されていましたが、Casperプロトコルの開発はあまり進んでおらず予定通りに移行できるかどうかが問われます。移行が送れる場合、再度のハードフォーク(Pos移行時期の後ろだおしにするコードを含む)が必用になりますので、これが行われるかどうかも注目です。
Casperはチャレンジングで移行できるかどうか、移行したとしてもバグがないのか、といったことで、Ethereumにとっては今後もチャレンジングな状況が続くでしょう。
ガバナンスについてはいろいろいわれていますが、このような状況のなか、ほぼVitarilk独裁で、ハードフォークを繰り返しながら、修正していくという方法が、今後も受け入れられるのかというも論点になります。

【大石予想】

  • EthereumはPOS移行できず。ETCが先にPOS+POWに移行(別アルゴリズム)。価格は昨年を超えられず。

ブロックチェーン

ブロックチェーンがハイプした昨年でしたが、実証実験も一巡した結果、実際にどの分野で実用化できるかが問われるのが論点となります。金融の基幹業務への適用は早々すぎと考えられ、周辺の事務分野か、もしくはSCMなどの非金融のデータ共有基盤として利用余地も論点になります。
MUFGコインなど、法律の定める仮想通貨ではないものの、ブロックチェーン技術を基盤とした電子マネーなどの登場も考えられます。
また、野口悠紀雄先生が述べているように、中央銀行、銀行、仮想通貨、この3者がそれぞれに通貨が発行できるようになる未来に、どのようなことがシナリオがあるのか、貨幣論的には面白い論点になり、議論が進むでしょう(シカゴプラン、ビッグブラザーの実現、ハイエクの自由通貨)

【大石予想】

  • 金融機関においてはブロックチェーン採用はなし。事務分野で限定的にテスト導入があるかも。実証実験は、SCMやチケットなど、非金融分野にシフトし一巡する。
  • 一方で、ブロックチェーンを機関システムに採用しゼロから立ち上げるというネット銀行の構想が欧州で立ち上げられ注目をあびる。
  • MUFGコインは円建ての電子マネーとして発行。内部的にブロックチェーンの技術を一部採用するが、トランザクションの署名や検証などはできず、実質はクライアント・サーバー形式にとどまる。

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