ビットコインと円天は何が違うのか?

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)

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ビットコインと円天の違いがわからない、もしくは、違いの説明に窮するというツイートが多い。

もう一度、ビットコインと円天の違いについて説明する。

<発行体のある資産>

まず、ビットコイン以外のすべての通貨について説明する。円天も、ドルも、ペソもリラも人民元も、アマゾンポイントも、楽天ポイントもTポイントも同じである。

その大原則は、

・発行体がある

・発行体により価値が担保される

この2つである。

国家の発行するお金も、企業が発行するポイントも、円天も、この点で一緒である。違うのは、発行体がどれだけ信用できるかにある。

米国のドルは、世界最大の経済力と軍事力により、安全だといわれている。日本円もいまのところ、国民の支持は厚い。

楽天ポイントやアマゾンポイントも、これらの企業が倒産する可能性はあまりなく、ポイントは有効だと信じられている。

このように発行体に対する信用が通貨の信用となる。

一方で、北朝鮮のウォンや、イラクのディナールがほしいというひとはあまりいないだろう。これらの国がどうなるかがわからないからだ。国が保証しているという仕組みは安全な資産の根拠にはならない。

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(写真)ハイパーインフレで紙くずになったジンバブエの、100兆札

円天の場合どうだろうか。これは、確かに結果として詐欺であったが、これを購入した人は、円天の発行会社(L&G)の払い戻し能力を信頼していたことになる。結果として騙されたわけだが。

さて、これを愚かというのは一言では難しい。貨幣の歴史を見ても、かつてのドイツマルクや、戦前の日本円など、国民が信頼していた通貨がただの紙切れになったことがある。これは結果として騙されたわけだが、そのときそれを信じていたひとが馬鹿だったわけではない。

<発行体のない資産>

ビットコインについていうと、仕組み的には、金、ゴールドに近い。

ゴールドは、発行体があるわけではなく、自然のなかに埋まっているものである。そして、ゴールドの価値を保証している政府や団体がいるわけではなく、ゴールドの価値はなにか?といわれても、人々がそれを価値があると古来から信じてきて、価値の保存に使ってきた、という歴史であるとしか言いようがない。金属そのものの利用価値が反映されているわけではないからだ。

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それでも古来から、つい最近まで、ゴールドはお金そのものとして流通してきた。江戸時代までは小判だったし、明治にはいっても日本円は銀兌換券であった。

中央政府が価値を保証していないものでも、お金として成り立ってきた。というより、古来より、むしろ、金にしろ、銀にしろ、人々が自然に価値を認めたものがお金になったという方がただしい。政府が、国民の貨幣だからそれを使えというように、金銀のうらづけのない紙を、強制力をもって制定してお金とするのは、つい最近のことである。

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(写真)新旧ドラクマ 左は現在の1ユーロ。右は、紀元前に発行されたドラクマ。銀貨は、2300年後も貴金属としての価値が残った。

もういちどまとめると、

簡単にいえば、ゴールドの価値とは

・埋蔵量に上限があり、人為的に操れないので、希少性がある

・人々がそれが価値があると考えており、高い流動性がある

といったものだろう。

ビットコインは、これに近い。ビットコインの発行量とスケジュールはあらかじめきめられており、発行量は上限が21百万枚である[重要]。それ以上のコインは発行されない。これは、人為的に操作ができず、偽造コインが出回る可能性は限りなくゼロに近い[重要](この部分に暗号理論による数学的保証が存在)。

また、世界中の多くの通貨と交換可能であり、ビットコイン自体で買い物も可能だ(VISAやマスターのデビットカードがあり、世界中の加盟店で使える)

さらに、ビットコインは技術的なイノベーションであり、決済や価値の交換といった仕組みを根本的に作り変えてしまう威力があると考えられている。シリコンバレー他の世界の起業家と技術者が真剣に取り組んでおり、名だたるベンチャーキャピタルが1,000億円近くも投資をしている。この分野から将来のgoogleやappleみたいな会社が出ると考えている。銀行も、ビットコインの技術について真剣にリサーチし始めた。MITもビットコイン専門のリサーチラボを設けた。このように、将来的な期待も大きい。

ビットコインに価値を認めているひとが、自由な相場で売買取引をした結果、現在300ドル付近の値段をつけている。これは、価値があると考える人の自発的な売買の結果であって、誰かがそう決めたわけではない。自由市場で価格が付いているのだから、その価値があると世界中の売買しているひとが認めていると考えるほか説明がつかない。

ゴールドは価値のある資産だが、持ち運びが不便で、支払いに使うことはできない。その点、ビットコインはゴールドの性質を持ちつつ、持ち運びが便利で、支払いも可能。さらに、デジタルであるため、プログラミング可能であるなど、将来的な応用の可能性を秘めている。そのため、将来的にビットコインは普及すると考えている人々がおり、価値を認めている。

<ビットコインの暗号通貨に占める位置>

とはいえ、ビットコイン以外にも、仮想通貨とよばれるものは1000以上ある。日本でもモナコインやリンゴやクマーやゼニーなど、多くの通貨が発行されている。これらにも、一定の値段がついて取引されている。

ただし、実際の状況はビットコインが圧倒的に価値が大きい。1000の通貨の時価総額は、4,713Mドルだが、そのうち、ビットコインの価値が、4,055Mドルを占める[1]。つまり、仮想通貨の90%はビットコインの価値が占めている。

仮想通貨という仕組みだから、どれも信用があるのではなく、ビットコインだけが価値が大きい。政府発行紙幣はどれも有用なのではなく、ドルだけが大きいのと同様である。

これは、ビットコインが他の仮想通貨にくらべて、圧倒的にその上に積み上がっているものが多いからだ

・世界中の30カ国以上でそれぞれの通貨に交換できる

・1日18万BTC(60億円)以上の売買取引がある

・ビットコインを基礎としたベンチャーが数多く興っており、1000億円近いベンチャー投資が行われている

・ウォレット、取引所、ペイメントなどの周辺サービスが圧倒的に大い

要するに、ひとことでいうと、コンピュータの世界と同じようなネットワーク効果(普及したものがより普及して価値が大きくなる)ということだ。貴金属でも、ゴールドのほかに、プラチナやジルコニウムやパラジウムなどもっと希少な金属があるが、それでもゴールドが一番信頼されているのは、換金性の高さや、便利さにあるということだろう。

なお、ゴールドの地上在庫の時価総額は、900兆円くらいといわれている。ビットコインの時価総額は、さきほどもいったように4000Mドルで、約4800億円である。

<資産クラスの違い>

さて、結論であるが、要するに、通貨と、ビットコインは、かなり違った資産に属するということである。ビットコインは、デジタルで保持でき、流通が簡単で、支払いにもつかえるデジタル・ゴールドに近い。

それを信用するかしないか、好むかそうでないかはあなたの嗜好によるところが大きい。

世の中には、いろいろな資産がある。専門用語では、アセットクラスという。

政府の貨幣とゴールドのほかにも、不動産、株、その他の商品(原油やトウモロコシ)もある。これらは、それぞれ違った性質を持っている。どちらがより信用力があって、どちらが信用できないということではないのは、ご理解いただけるはずだ。

世の中にも、もっぱら現金で貯めているひともいれば、株が好きなひともいれば、不動産だけが資産の王様だという人もいる。貴金属でも、ゴールド好きもいればプラチナが良いという人もいる。それぞれの考えるところが違うのだろう。そして、それだけ多様性があることは良いことだ。

ビットコインを含めた暗号通貨というのも、もっとも新しい資産として、ほんの少しだけその仲間入りをしているということである。

そして、暗号通貨の中では、ビットコインが最も信用があると思われている、ということである。

さて、ビットコインと円天の違いというテーマだったが、書き始めたら全く違う話になってしまった。

<まとめ>

結論として言えるのは、

・ビットコインと円天は資産の性質が違う。ビットコインは発行体のない資産であり、円天は発行体のある資産である。

・発行体がある資産だから安心、発行体のない資産だから信用できないとは一概にはいえない。それぞれのカテゴリで、信用できるものとそうでないものがあった。

・円天の発行会社のL&Gの信用は低く、詐欺であった。

・ビットコインは、暗号資産という新しい資産クラスである。その中では、ビットコインは圧倒的な信用を誇る。

・暗号資産というアセットクラス自体の信用は、他の資産にくらべて信用がなく、規模は非常に小さい。

といったところだろうか。これらを材料に、あとは自分で考えていただけると嬉しい。

[1]http://coinmarketcap.com/

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