ビットコインの「価値」について議論するための基礎知識

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ビットコインは価値が有るのか。ビットコインは通貨なのか?この話になると、もう話に収拾がつかなくなるとおもう。

ただ、そこが本丸だとおもうので、ビットコイン解説家として、あえて切り込んでみることにする。おそらく今までおこなわれた説明のなかで、いちばんわかりやすいと思う。

なお、前回までの基礎解説は「事実」を説明したが、今回は事実ではなく「考え方」の説明だ。そして、これが賛否両論なのも理解している。下記の説明をよんで、賛するか、とんでもないと非するかは貴方の自由だ。賛否がわかれるから、これほど物議をかもしているのだ。そして、どちらの立場も正しい。これには結論など出ていない。

Q ズバリ、ビットコインは通貨なのですか?

違う。断言する。ただし、意地悪ないいかたで、違うといっておく。

Q 「意地悪ないいかた」ってどういうことですか?

つまり、現在の通貨と同じではないということだ。国家が、将来の税収によって返済を約束した国債を担保にして、中央銀行が発行した銀行券ではないということだ。

Q 意地悪ですね

そうだ。つまり、通貨とはあらゆる意味でちがっており、共通点などまるでない。一切の共通点がないのだ。だから、これを通貨と呼ぶのは間違いだと思う。通貨と呼んでしまうことが、ビットコインについての理解をさまたげているとおもう。

Q じゃあ、ビットコインは何なのですか?

ゲームのアイテムだ。ビットコインゲームのアイテムである。

Q え?アイテムですか。オンラインゲームとかのアイテムとか、ゲームのなかのお金と一緒ですか?

そちらのほうが性質がちかいだろう。そもそもビットコインの歴史をしることが大事だ

Q ビットコインの歴史をおしえてください

中本サトシというひとが、ビットコインの論文を発表したことから始まるというストーリーはきいたことがあるはずだ。
この論文はお金に関する論文ではない。暗号と、コンピュータアルゴリズムに関する論文だ*。
本来ビットコインは、暗号と、コンピュータアルゴリズムに関する理論的な発明なのだ。

Q どうしてそれが通貨になるのですか?

このアルゴリズムは、画期的で、いままで実用的な回答がなかったビザンチン将軍問題と言うものへの実用的な回答だった。そのビザンチン云々は説明しないが、とにかく、コンピュータアルゴリズムに関するブレイスクルー的な発明であった。
なので、これは凄い、ということで、周りの人が飛びついた。
この理論は斬新で、暗号やコンピュータの理論をやっている人にとっては、めちゃくちゃ面白い存在だった。実際の世界で動くかどうか試してみたい。そう考えるのは当然だ。

Q それで、出来たのがビットコインですか?

そうだ。中本サトシがビットコインを実際のコンピュータのソフトウェアとして動くようにした。設計図だけではなく、実際に動くオモチャができたのだ。そして、その周りの開発者たちがそれを改良していく。
これは、公開でおこなわれて、Linuxのようなオープンソースとして有志によって開発された。だれでも参加可能だった。
参加している人は、趣味だ。
こんな面白い仕組みなのだから、いろんなひとが参加する。どんどんこのゲームは広まっていった。

Q では、聞きます。ビットコインゲームはなにができるのですか?

ひとつ。あるビットコインIDから、別のビットコインIDに、値(つまりコイン)を移動させることができる。
ふたつ。この移動の履歴は、公開され、だれでも知ることができる。
みっつ。公開してやっているのに、その移動履歴は、改ざんできないことが原理的に示されている。
よっつ。このネットワークを維持管理するには、参加者それぞれが、メンテナンスのためにある種の計算をしつづけないといけない。その計算が「採掘」とよばれる計算だ。その計算のためにコンピュータの計算能力を提供したひとは、ご褒美として、ビットコインが与えられることになっている。

Q 採掘って、メンテナンスのことだったんですね

そうだ。ビットコインの仕組みが動き続けるようにメンテナンスする作業が、採掘とおもっていただくとわかりやすい。これがないと、ビットコインの仕組みは停止してしまう。

Q みんなご褒美のコインに熱中したのですか?

そう。みんな価値の無いコインをてにいれるために、一生懸命計算して、コインをご褒美でもらった。でも満足したんだ。面白いから。それに、なにがしかの価値がそのコインにあると思ったのかもしれない。それに計算をおこなってないと、ビットコインの仕組みは機能停止してしまう。

そして、もらったコインで送金したり受信したりして、コイン遊びを楽しんでいた。そして、もらったコインで送金したり受信したりして、コイン遊びを楽しんでいた。これを使ったオンラインカジノもできてね、コインを賭けてポーカーに興じたんだ。
単なる遊びだったのだ。もちろん、コンピュータ科学者とオタクの間での知的な遊びだけれどもね。

Q 遊びだったのですか。その時点では、無価値のポイントみたいなものですね?ゲーム内のマネーと一緒におもいます。

そうだ。
だが、人間は、お金に似ている性質のものを見つけると、お金に見えるという性(さが)がある。だんだんと、それを本当のお金と同じように価値があると思うようになった。

あるとき、掲示板であるプログラマが1万ビットコインを差し出し、ピザと交換してほしいと申し出た。ピザを提供する人が現れた。25ドル相当のピザだという。
このとき、ビットコインは、現実のものと交換されたのだ。

Q すごい錯覚ですね。なぜピザを提供したのですか

ピザ屋がどう思ったのかはわからない。ただ、そのビットコインに何らかの価値をみいだしたのだろう。

Q その価値とはなんですか?

それはビットコインが持ついくつかの性質だ。まず、ビットコインは、ネットワークのメンテに参加(採掘)しないと手に入らないし、それは面倒で、時間が掛かるし、電気代もかかる。
そして、実は、このゲームに参加する人がふえるにつれて、なかなかコインは手に入らなくなった。希少性が生まれたのだ。
つまり、ゲーム内のアイテムがレアになっていったのと一緒だ。

Q レアアイテムが欲しい人は、金を出してまで買う?ということですか

誤解を恐れずにいうとそうだ。
ビットコインゲームの中のお金が、だんだんと、本当のお金のように見えるようになってきたのだ。

Q 人間の想像力とは凄いですね。

そう思う。実態のない数字を、お金と思いこむ力があるんだ。

Q ビットコインはその後どうつかわれるのですか?

ビットコインは、そのうち、ビットコイン仲間のなかでの仮想のお金のようにつかわれるようになった。コインと引き換えに、ソフトウェアの開発を引き受けたりするひとも現れた。そして、ついに、交換所と呼ばれるものが出きて、現実の通貨、米ドルやユーロなどと、公然と交換を仲介するようなところが現れた。ビットコイン交換所の登場だ。

Q それがMt.Goxなのですね。

そのとおり。

ところで、Mt.Goxはなんの頭文字か知っているか?
これは、”Magic the Gathering Online Exchange”の略だ。マジック・ザ・ギャザリングというカードゲームのレアカードを、現実のお金で売買するという場所だったのだ。

Q え、Mt.Goxは、ゲームのレアアイテムの市場だった?

そうだ。だから、ビットコインを取り扱うようになったのかもしれない。そして、ビットコイン交換所として世界最大になった。
最初ビットコインは10セント以下で取引されていたが、だんだんと人気がでて、御存知の通り最盛期は1,000ドルを超えた。

Q でもゲームのアイテムは暴落しますよね。あんなものは一時的です。

そうだ。ゲームのアイテムが問題なのは、2つの理由による。

ひとつは、そのゲームが終了してしまうかもしれない。ゲームの胴元は、ゲームが古くなるとゲームの提供をやめてしまう。あるゲームのアイテムは別のゲームでは使えない。互換性がないのだ。

2つ目は、ゲームのアイテムは、いくらでも増えることがある。レアなカードが人気になると、ゲームの販売元は、さらにレアな超レアカードを出して売上を伸ばそうとする。胴元のさじ加減で、コントロールされている。そしてレアだと思っていたカードが突然沢山でてくることもある。
これに気づいた時に、参加者はみな「冷める」。このゲームはフェアじゃない。アイテムは投げ売りされるんだ。

Q ビットコインは普通のゲームとどう違うのですか?

ひとつは、互換性があることだ。あらゆるゲームで使える普遍的なアイテムのようなものだ。むしろ逆か。このアイテムが普遍的なので、そのアイテムが使えるゲームが大量にふえているといったほうがいいかもしれない。

ふたつめは、このゲームはフェアだと思われているということだ。このゲームに胴元は存在しない。ビットコインの供給は予め決められたルールに基づいて自動的に発行されていて、2100万枚の発行上限がきめられている。コインの履歴も公開されており、嘘がつけない。暗号と、アルゴリズムにより、送金の改ざんが不可能だ。ビットコインというアイテムを手に入れるにあたっては、参加者全員が絶対にずるができない。そう確信できるゲームなのだ。

Q  もし、ズルができたらどうなりますか?

そうだな、暗号が破られて、アリもしないコインが出てきたり、取引の金額が書き換えられたりできたとする。これは、タダでレアアイテムが手に入るということだ。ゲームのズルができるということだ。

その瞬間、ゲームオーバーになる。ビットコインの取引価格はゼロになり、このゲームは終わる。

Q いま、ビットコインの価格がありますけど、これは誰が、どうきめているのですか?

これは、誰かが決めているのではなく、市場の価格だ。
ビットコインをすでにもっていて売りたい人がいる。それをドルやユーロで買いたい人がいる。それが交差するところが価格だ。経済学で学んだはずだ。
もし、誰かが1ビットコインを売りに出し、それを誰かが600ドルで買えば、ビットコインは600ドルということになる。

Q それは市場価値であっても、本質的な価値ではないのではないか?

市場価値と、本来的な価値は違う。それは区別して議論してもいい。

ビットコインには、それを売り買いするひとがいる限り、市場価値がある。ただ、本質的には仮想ゲームのアイテムにすぎないので、本質的な価値は存在しない。

多くのものには、本来的な価値がある。金(ゴールド)も、装飾品として美しいし、わずかながら実用上の価値がある。ただ、ビットコインにはそういう本来的な価値が一切ない。つまり、純粋な形で、人々のお金という機能に対する何かを具現化しているのだ。 

Q やっぱりビットコインは幻想にしか見えません。

その幻想は、人々の心のなかにある。それがコインを通して具現化しているのかもしれない。そして、それが起こっていることに、人々は恐怖を感じている。しかし、それを起こしているのも人間なのだ。

ビットコインは、このような仕組みの上になりたつ、通貨モドキのようなものが、はたして成功するか、しないのかは私にもわからない。

ただ、言えることは、ビットコインが本質的価値をもたないにしろ、これをお金のように思い込めば、取引がとても簡単になり、便利になり、コストも安くなるということだ。

そうだなぁ、「虚数(i)」みたいなものだよ。現実には存在しない。でもそれを仮定したら、便利になった。ビットコインは仮想のものだ。だが、これをお金とみなしたら、便利になるかもしれない。

Q 私は信じませんね

そうだね。そういうひとは使わないといい。これは、ビットコインをお金のように思い込んだ人のなかで使われる、何か得体のしれないものなのかもしれないからね。僕にも、ビットコインは怪物に思えるよ。決して通貨じゃない。

ビットコインについては、仕組みの解説、技術の解説をお受けしております。
取材の連絡は、次のメールアドレスまでご連絡ください。tyk@tetsuyuki.com

日本デジタルマネー協会 フェロー  大石哲之

*なお、中本氏の論文は「P2P電子マネーシステム」というタイトルで、これが電子マネーでの応用を意図しているというのは確かである。ただ、あくまで理論的な話であって、そのバーチャルな数字に、価値を見出していったのは、周りの人々である。

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