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リップル社の資金調達に関する疑念点

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)

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リップル社の資金調達に対する疑念をいくつか端的にのべておきます。

(xrpとは、リップルのレジャー内でつかわれる中間決済通貨、もしくはシステム利用の際に必要となる手数料の双方として作成された仮想通貨です。)

資金調達の迂回手段による不公正な競争について

xrpは、まったくの無から、何の対価もなしに、1000億xrpが発行され、リップル社と関係者がそのすべてを保有しました(80%がリップル社、20%が創業の3人)。リップル社はこのxrpを徐々に販売することで通貨発行益を得ることができます。(※1)

リップル社は、並行して株式の新規発行(増資)による資金も調達も行っており、昨年シリーズBとして55百万ドルを調達しました。しかしながら、xrpの保有の状況、市場の売買の状況を鑑みるに、株式による調達よりも、xrpの販売による調達額の方が大きいと推測されます。

たとえば公表されているxrp配布状況へのリンクをみてみましょう。リップル社は継続してxrpを放出していることがわかりますが、直近の数字を引用します。

4/30〜5/7日: 3億5000万 xrp

5/7〜14日: 2億2600万 xrp

僅かに2週間たらずでこれだけのxrpが放出されており、たとえば市場価格が高騰した後者の7日間だけをみても、2億2600万 xrpに、市場価格40円をかけ合わせると、90億円にもなります。これは、2度に渡る株式による調達額を上回わる数字です。

リップル社は、現在でも発行した1000億xrpのうち60%にあたる約600億xrpを保有しています。これは、約2兆4000億(@40円)の時価総額になります。通貨の発行で2兆円が調達できてしまえば、他社は競争が成り立ちません。

(ロックアップに関する声明[1]にかかれているように、リップル社がのこりのxrpを売る意図があるのは明確です。声明では、毎月10億xrpづつを55ヶ月かけて放出できると宣言しています)

通常の株式による調達では、財務諸表の公開や監査、株の売り出しに際しては目論見書や公告などの手続き等、透明性のある情報公開が前提であり、厳しいルールのもと公正な競争が行われていると理解しています。

リップル社がxrpによる資金調達を続けると、これは通常の株式による資金調達を行っているスタートアップとの競争上著しい不公平感を招きます。健全な競争が行われているとはいいがたい状況です。

利益相反について

リップル社のxrpによる販売益は、使いみちが限定されておらず、リップル社の自由です。

この場合2つのケースで利益相反がおきます。ひとつはリップル社がxrpと相関の薄い事業に再投資することです。もうひとつの究極のケースは、株主に利益を配当してしまうことです。

この2つのケースが起これば、xrpの保有者と、株主の間で著しい利益相反が起こります。とりわけ後者は、xrp購入者の資金が、リップル社を通じて直接に株主に移転します。

モラル上の観点から行われないことが望ましいですが、それを防ぐ手段が講じられているわけではなく、一般の資本主義の原則にのっとれば、むしろ配当することが望ましいのはご存知のとおりです。

リップル社は、こうした関係がどうなっているのか、納得のいくレベルで説明すべきでしょう。リップル社の努力が最終的にxrpの価値を上げると一般論では説明[6]していますが、不十分と言わざる得ません。

消費者保護について

xrpは、金融機関同士が決済の媒介として利用することを想定された中間通貨であり、リップルのシステムの利用の際に必要な手数料を支払うためのものです。その利用者は金融機関にほぼ限定されます。ですから、常識的に考えればxrpは利用者である金融機関にむけて販売されるのが筋です。

しかしながら、xrpは消費者に向けて販売されています[5]。xrpの最終保持者は一般の消費者です。つまり、リップル社は、直接の利用目的のない一般の消費者に、このコインを販売しています。

なぜ利用者でない人にxrpを販売するのでしょうか? 理由は言うまでもありません。

情報公開について

xrpは銀行システム間で使われる中間通貨だとのべました。

仮に金融機関がxrpの購入主体であれば、リップルをつかった実証実験をしているわけですから、有用性やリスクの判断がつきます。

しかし、現在xrpを購入している主体である消費者には、金融機関の社外秘である実証実験やシステムの内容を知ることは不可能です。

そのため、消費者は、リップル社と金融機関からのプレスリリースを主たる情報源としてxrpを取引しています。

一方、リップル社はニュースや情報公開のタイミングや内容をコントロールできます。

今回、価格が高騰しているさなかに、ロックアップのIRが発表されました。供給量という最も重要な問題に関して、(放出するにしてもしないにしても)すべてのコントロールがリップル社にあることを証明した形です。

リップル社が保有するコインを消費者にむけて販売するのであれば、適切な情報公開や、IRのルールなどに基づいて公平かつ透明な販売をすることが望ましいといえます。

もちろんこのような透明性を欠く販売であっても、あえてそれに参加する人がおり(それは自由です)、規制もない以上、これを防ぐことはできません。

また、日本では、資金洗浄防止と消費者保護を目的とした改正資金決済法(仮想通貨法)が制定されました。しかしながら情報公開が不十分かつ、供給が会社のコントロール下にあるコインが、取引所の大きな出来高を占めている現状については、立法趣旨が反映されていないようにも思います。

株価とxrpの時価総額について

これらのことを裏付ける証拠として、リップル社の株式の価値と、xrpの価値との比較が有ります。

リップル社は、2016年にシリーズBの資金調達をおこなっており、調達額が55百万ドルです。シリーズAとあわせて87百万ドルの調達です[2]。これからリップル社の株式の評価額を推測すると、合理的な範囲を超えなければ、約500億円程度を上回らないと考えるのが妥当です[3]。

これに対して、リップル社が保有するxrpの価値は先程も計算したように2兆4000億円です。

、xrpはリップル社の単独の所有物であり、これをリップル社が自由に処分することができることから、「リップル社の株式としての時価総額 >>> XRPの時価総額」となることが合理的です。しかしながら、現実は、これが逆転しているばかりか、著しい額の差がみられます。

この逆転と額の差については何が原因であるかを指摘することはいたしませんが、常識では説明のつかない現象が起きているといえます。

もし、単にxrpの価値が反映されていないのであれば、修正すべき水準はリップル社の株価であり極端に割安です。競合他社は今すぐ割安なリップル社を買収するべきでしょう。その上でxrpを売り尽くし株主に配当すれば莫大なリターンを得ることができます。

透明化に関して

 

リップル社は、現在のxrp保持者に保有比率に応じて、自社株を割り当てたうえで残りのxrpを償却すべきです。

xrpホルダーは株式をえることで、利益相反の可能性がなくなり、またxrpに投じた資金を間接的に取り戻すことができます。

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【注意事項】以上は私の個人的な見解に基づく意見です。なお当記事はxrpの売買について推奨または否定するものではなく、アドバイスを提供するものでもありません。xrpの取引を行う際は自己の責任において行ってください。

【注記】

※1 正確には関連会社の XRP2 LLC という会社がカストディとなり販売を行っています。しかし、FinCENの罰金ステートメントではXRP Fund II(現XRP II)はリップル社の完全子会社( a wholly-owned subsidiary of Ripple Labs)であると書かれており、公式プレスリリースなどでもリップル社を主語としていることからも、これらは実質的に一体であると考えられます。

【参考文献、出所】

[1]http://www.coindesk.com/ripple-pledges-lock-14-billion-xrp-cryptocurrency/

[2]https://ripple.com/ripple_press/ripple-raises-55-million-series-b-funding/

[3]ベンチャー投資経験者による意見

[4] リップル社のビジネスモデルについて-田中硬貨研究所

[5]リップルが直接取引所で売っているわけではなく、第三者経由で市場外取引となるように売っています(独自取材より)

[6]

以下は田中さん記事の引用です。

・おしらせ
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