ビットコイン規制の施行で取引所のセキュリティは上がるのか?

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインを解説

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ビットコインの規制案が国会を通り、成立した。これにより、ビットコインが法律的に位置づけられ、いままで手をつけられなかった会社が合法的に取り組むことができるように成り、業界にとってのメリットは大きい。

一方で、規制の目的は、アンチマネーロンダリングと、消費者保護だといわれる。とりわけ日本では、Mt.Goxがあったため、消費者保護を気にする人が多い。

最近でも、GatecoinのETH盗難や、Shapeshiftの内部犯行、Cryptsyの持ち逃げ事件など、GOX事件は引き続き起き続き得ている。(幸い直近のGatecoinにおいては、倒産にならず、ETH以外の資産は戻ってきた)

はたしてこの規制で、消費者は保護されるのだろうか?その点を考察してみる。

1) 倒産隔離の問題

法律では、顧客資産の分別管理が義務付けられた。これは顧客の金と、会社の金を一緒の財布にいれるのではなく、銀行口座を分けましょうといったものだ。

しかし、これは倒産隔離とは違う。倒産隔離とは、会社が倒産しても、顧客資産は全額保護されて、それは戻ってきますよ、というものだ。

分別管理だけだと、結局倒産した場合は、顧客の資産も、他の人の債権(たとえば、会社の給与未払や、会社の借金など)も全部ごっちゃになってしまう。Mt.Goxがその好例だ。

倒産隔離を実現するには、信託銀行などに資金を信託する必要がある。しかし、ここで、一つの問題がある。

2)ビットコンを信託する方法がない

日本円は信託銀行に信託することで、倒産隔離ができる。そのため、法律では決められていないが、取引所が自主的に、日本円を信託することで、消費者保護がなされる。

しかし、ビットコインのほうはどうだろうか?

現在のところ、ビットコインほか、暗号通貨の信託はできない。やりようがなさそうだ。

そして、仮に、信託というような形で、第三者にビットコインをわたしたところで、安全性は増すのだろうか?結局ビットコインが盗まれたら、補填のしようがなく、帰ってこない。

3)結局狙われるのはコイン

日本円資産については、実のところあまり論点にならない。結局、狙われるのはコインのほうだからだ。

過去に倒産した取引所はすべてコインが盗まれたことに起因するが、その場合、とにかく、コインがないのだから、顧客に返しようがない。コインを分別管理しようが、なにをしようが、盗まれたら終わりである。

とにかく、盗まれたら終わりなのである。

現在のスタンダードでは、取引所は99%のコインをコールドウォレットで管理しているのが普通である。ただし、これらのコインであっても、内部犯罪(※Shapeshift)や、ソーシャル・エンジニアリング(※Bitpay)などでコールドから盗まれる可能性が有る。

4)規制はコインのセキュリティをあげない。

今回の規制は、コインの保管に関するセキュリティを一切あげない。規制を守ったからといって、コインのセキュリティが上がることはない。これは規制がわるいのではなく、逆で、そもそもコインのセキュリティを上げるような規制などつくれないのである。(コインの99%以上をコールド管理しないさいとか、そういう感じであるが、具体的すぎて規制条文にはなじまないだろう)。

そもそも今回の規制は、FATFからの勧告で、金融庁が致し方なく対応した面がある。つまり、目的はアンチマネーロンダリングである。そちらの方面では、他の金融機関と同じレベルの規制が掛けられ、一定の目的は達せられることになる。

ただし、ユーザーから見れば、本人確認が面倒(郵送になったり)、いろいろ監視されたり、あまり使い勝手向上につながらない。一方で、セキュリティのリスクはまったく上がらないばかりか、そちらのお金や手間をとられて、セキュリティ方面に手が回らなくなる可能性がある。

最終的に取引所のセキュリティをどのように解決するかは、課題の多い問題だが、これらは暗号通貨コミュニティと取引所が技術開発によって解決すべき問題である。

 

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