番外 サトシラウンドテーブルパネルへの私の意見

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインを解説

レポート「ビットコインの情報源決定版(26ページ)」を配信しました。レポート内容へ

先日サロン内で、サトシラウンドテーブルパネルの全訳をレポートしました。それに対する、私が重要と思った点、意見を述べます。あくまでレポートとは別の個人的意見として参照ください。

<要点>

・中国のマイナーによれば、ブロックサイズは8Mが可能な上限

・ビットコインはレイヤー2テクノロジーなくしてスケールしない

というのは、最も重要なポイントだと思います。

2Mにするのはネットワーク帯域的にも問題なかろうし、良いことだとおもいますが、4M、8Mとなるとどうでしょう。中国のマイナーの意見は参考にすべきで、結局ネットワーク帯域の急激な進歩がなければ、8Mあたりが限界だろうと。

ハードディスクは日に日にでかくなりますが、ネットワークの帯域はそれほど急激に太くはなっていません。

つまり、単にブロックサイズをあげるだけでは、スケーラビリティは成し得ないということでしょう。たとえば、現時点で最大と考えられる、8Mに仮にしたとして、Segwitによるデータ量圧縮効果もいれても、現在の容量の16倍が限界だと想定されるわけです。

これは1秒間に、112トランザクションです。VISAのネットワークは現在でも1秒間に5万6千以上の性能があります[1]。これでは、いくらブロックサイズを上げたところで、どうにもならないのは目に見えているのではないでしょうか。

つまり、現在のビットコインのメインネットワークで、すべてのトランザクションをさばくのではなく、レイヤー(階層化)する必要があるということです。

パネルでは、Factomの例が上がっていました。Factomは、別のネットワークで文書ハッシュの処理をして、ルートのハッシュのみをビットコインのトランザクションに10分に1回だけ書き込みます。これにより、ビットコインのセキュリティを享受しつつも、大きなトラフィックをビットコイン外に逃しています。

こうしたテクノロジーのビットコイン版としては、サイドチェーンが上げられます。

これは、ビットコインとは別のチェーンを作り、ビットコインをそのチェーンに安全に移管したり、その逆もできるようにするものです。つまり、ビットコインをプライベートやコンソーシアムチェーンで運用できる様になるというものです。

ライトニングネットワークは、ほとんどしられていないと思うのですが、マイクロペイメントを実現するテクノロジーと、rippleのような支払のルーティングのようなものを組み合わせた技術で、簡単にいうと、ビットコインのネットワークの上に、rippleを実現させるようなものと捉えていただくとわかりやすいかもしれません。さらに、rippleの場合、ゲートウェイを信頼しなくてはならず、ゲートウェイがGOXしてしまうとダメですが、ライトニングネットワークの場合、ゲートウェイを信頼する必要がなく、ゲートウェイが消えたり悪意があるものでも動くという完全なトラストレスシステムとして設計されています。

このように、ビットコインをスケールさせるテクノロジーは、次のレイヤー2テクノロジーにかかっているとおもいます。

この認識を皆が共通にもって、レイヤー2の実現に邁進して、技術開発のリソースを突っ込むべきです。2Mハードフォークで揉めていないで、一刻も早くレイヤー2のコードを書くべきとおもいます。

そして、レイヤー2も含めたロードマップを示して、世間の理解を得ることが大事と思っています。多くの人は、レイヤー2の存在もまだしりません。そして無知なまま、ビットコインは決してスケールしないと決めつけているひとが多いと思います(有名人や識者とよばれる人の中にもそういう人が居ます)

・開発者不足の問題

コア開発に加わるひとがここのところほとんど居ないという問題が上げられています。ちょっと触れられていただけですが、これは重要な問題でしょう。

ビットコインの中身は複雑で、失敗も許されないコードが多いですから、いわゆるウェブ的なイージートライが許されにくい上に、暗号や数学の知識も必要で・・・ハードルが高すぎるわけですが、そうした逸材がいなければ、ビットコインは進展しません。

伊藤穰一さんもブログの中で懸念していたように[2]、このような才能は極めて希少であり、現在の状況は、開発者の才能を浪費しているように見えます。

・トランザクション投票

パネルのなかで、概ね賛成の雰囲気があったというトランザクション投票については、私はどうかと思います。確かに、トランザクション投票は、直接ユーザーの意見を示すことができるという意味で、アンケート手段としては良いと思うのですが2つの懸念があります。

一つはDDOSの可能性。つまり、SPAMトランザクションならぬ、SAPM投票が多くなってしまい、結局意味を成さないのではないかということ。

もう一つは、民主主義は危険ということです。つまりポピュリズムにつながりやすい。ユーザーは技術的な判断はできませんから、なんとなく便利や、短期的に有利なことに飛びつきやすい。そうしたユーザーの意見を元に開発方針を決めるのは良くないと思います。

もちろん、「参考程度」にするにはいいと思うのですが、それが「投票」として意思決定力をもった瞬間、ビットコインは政治の産物となり、数年で消え去ってしまうでしょう。

ユーザー投票による意思決定は極めて危険です、避けるべきです。

中国のマイナーも、現実には彼らのハッシュパワーがすべてを決めることになっていながら、技術的な意思決定についてはそれを決める資格がないと、極めて謙虚です。これは素晴らしいことと思います。もし、マイナーの一部にでも、ハッシュパワーが偉く、ハッシュパワーを持つものに決定権があるといった考えの人がいたら、これもビットコインは数年で消え去るでしょう。

[1]http://www.paymentnavi.com/paymentnews/44607.html

[2]http://btcnews.jp/joi-ito-view-on-current-bitcoin-community/

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