マイク・ハーンのビットコイン失敗宣言は本当か?価格は今後どうなるのか?【Weekly レポート017】

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインを解説

レポート「ビットコインの情報源決定版(26ページ)」を配信しました。レポート内容へ

先週の最大の話題は、なんといってもビットコインのコア開発者であったマイク・ハーンが離脱して、ビットコインは失敗したという長文ブログを書いたことです。このブログをNYタイムスが取り上げ、うわさが広まると、ビットコインの価格は460ドル付近から、一時350ドルまで大暴落しました。現在でもあまり値を戻していません。

これほどまでに影響力があるとはおもってもいなかったこのブログの内容ですが、長文かつ英語ですので、読むのが大変だと思います。しかし内容は押さえておきたいと考える人も多いとともいます。ブログの指摘はは本当にビットコインの失敗を指摘しているものなのか?価格は今後どうなるのか?そういった疑問をお持ちと思いますので、今回の記事は、それに答えます。

ちょうど、友人の堀さんが、この全文を訳してブログにアップしてくれました。今回は、堀さんの和訳を引用しながら、私のコメントしていきたいとおもいます。

ビットコインという実験の結論 (マイク・ハーン)

僕は5年のあいだ、ビットコインの開発者を務めてきた。何百万人のユーザーや、何百という開発者が僕の書いたプログラムを使っているし、いくつか僕の議論からそのまま生まれたスタートアップも存在する。Sky TVやBBC Newsでビットコインについて話したりもした。Economist誌は僕をビットコインの専門家であり特筆すべき開発者だと何度も紹介している。僕はSECや銀行家達に、また一般のひとびとにはカフェで、ビットコインについて説明してきた。

(コメント)マイク・ハーンは、もともとグーグル・スイスにいた技術者で、5年ほど前にビットコインにほだされて、コア開発者のに仲間入りしました。

昨年の秋には、同じくコア開発者のギャビン・アンドレセン氏によって、ビットコインのブロックサイズを拡張して、VISAネットワーク並のスケーラビリティを目指した、XTを提唱します。しかしながら、これはコミュニティの支持を得られませんでした。

この時、マイクらは、ビットコインXTをいきなり発表し、ビットコイン採掘者にこれを採用するか否かの投票を迫りました。

いわゆるビットコイン採掘者のハッシュパワーによる投票で、ビットコインの仕様変更を迫ったのです。これが従来の路線からはクーデターのように捉えられたりして、コミュニティは分裂。

その後、XTは支持を失いますが、スケーラビリティの問題については未解決の状態がつづきました。そこで、2回にわたり、スケーラビリティの問題を解決するために、コア開発者から、中国のマイナーまでがあつまって、議論が行われました。昨年の香港の会議をにおいて、一定の方向性はでたものの、まだ、実際に仕様の変更などは行われていない状態です。

初めから僕は同じことをいっている。「ビットコインとは実験であり、実験は失敗することもある。だからなくなってもいいと思える以上に投資してはいけない」。僕はこれをインタビューでも会議の席上でも、メールのやりとりでもいってきた。これはGavin AndresenやJeff Garzikといった、ほかの有名な開発者も同じだ。

(コメント)これは結構温度差があるとおもいます。Gavinは、ビットコインは将来のための貯金だと言っていて、毎週月曜日に自動的にビットコインを買うという積立をしているようです。ビットコインのコアコミュニティは、すでにビットコインは実験だ、というよりもシリアスに捉えているのでは無いかと思います。もちろん、ほんとに失敗した時を考えて、なくなってもいいと思える額以上は投資するな、というのは責任回避の言い訳トークな気がします。

このように、ビットコインは失敗するかもしれないと思ってきたにもかかわらず、いよいよビットコインは失敗「した」と結論せざるをえない状況にはとても悲しく思う。基本的な条件がゆがんでしまっているし、短期的にも長期的にも、コイン価格は下落傾向をたどることになるだろう。僕はこれ以上ビットコインの開発にはかかわらないし、自分のビットコインもすべて売却してしまった。

(コメント)ビットコインは失敗したというのはマイクの私見です。というか、マイクが考えるビットコインの未来つまり、ビットコインXTが失敗したというのが事実で、それをもって、ビットコインは終了だとおもっている、と捉えるのが現実に近いとおもいます。

マイクが売却したビットコインは、Few hundred とNTタイムスにありました。数百ビットコインというところでしょうか。すべて売却したというのは、よっぽどの決意なのでしょう。

ビットコインはなぜ失敗したのか?

ビットコインが失敗したのは、ビットコイン・コミュニティがうまくいかなかったからだ。

ビットコインは「中心的な組織」も「大きすぎて潰せない問題」もない新たな、分散型のマネーになるはずだった。だが実際にできあがったのは、それより悪いもの、つまり「一部の人々によって完全にコントロールされている仕組み」だ。もっといえば、ビットコイン・ネットワークは技術的に崩壊する瀬戸際にいる。これを防ぐはずだったメカニズムはうまく動かず、結果としてビットコインが従来の金融システムより優れたものになるという望みは絶たれてしまった。

(コメント)結局のところ、XTをめぐるいざこざで、ビットコインコミュニティと折り合いがつかなくなったことを言っています。

考えてみてほしい。もしきみがビットコインのことを知らなかったとして、こんな決済ネットワークに興味をもつだろうか?

  • いまあるお金を動かすことができない
  • 手数料は高く、かつ急激に上昇し、予想がつかない
  • 客は店を出ていったあと、ワンボタンで支払いをキャンセルできる(きみはこの「特徴」に気づいていないかもしれないが、ビットコインはそういう風に改修されたんだ)
  • 巨大な履歴データとflaky paymentsに悩みを抱えている
  • 中国にコントロールされている
  • 取り巻く会社や人々が公然と揉めている

答えはノーだといっていいだろう。

(コメント)この指摘は半分正しく半分的はずれな気がします。手数料については、そのような危険性がありますが、まだ顕在化していません。支払いのキャンセルについては、マイニングされる前(0確認)の状態であれば、支払先を変更できるという改修がなされたのは事実ですが、1確認後は変更できませんから、これは言いすぎです。

巨大な履歴データは、むしろXTのほうがそういったブロックチェーンのサイズを肥大化させる提案ですから、矛盾しています。

中国にコントロールの話は後述。

問題点の指摘はあっていますが、その解決方法について合意できないといいったところなのでしょう。

ブロックの限界(Deadlock)

ビットコインの現状をよくわかっていない人のために、2016年1月現在のビットコイン・ネットワークの状況を紹介しよう。

ブロックチェーンは満杯(full)だ。ブロックチェーンの本質は連続したファイルだから、「満杯」になるなんてことはありえないと思うかもしれない。それはこういうことだ。ずいぶん昔に、1ブロックあたり1メガバイトという容量制限が、急場しのぎの仕様として盛りこまれていて、いまも残っている。その結果、ネットワークの容量がほとんど限界に達しているということだ。

(中略)

ネットワークが限界に達すると、信頼性は大きく損なわれる。だからオンライン攻撃をかけるときは、単に標的に向かって大量のトラフィックを流すだけでいいんだ。もちろんクリスマス前には決済不全が多くなるし、集中する時間帯に遅れが生じるのは当たり前になってきている。

(コメント)この指摘はたしかに正しく、現在でもブロックサイズは限界ちかいところまで使われています。現在は、DDoS攻撃の実験は行われてないので、遅延はあまりないとおもいます。

ビットコインの初期の設計で、ブロックサイズを1MBと決めたのは、適当に決めたわけではないようです。1MBというのは、ネットワーク帯域の不十分な国や、低速のネットワークでつながっているモバイルなどの状況を勘案して、それでも十分な速度でブロックの情報が遅延なく伝達するには、1MBくらいが適当だろうということです。

もし、ブロックの情報の伝達遅延が起こると、世界中のビットコインノードで、あるところは最新の情報をもっているのに、あるところはまだ伝達していないといった、同期のズレがおこります。

実は、取引の遅延よりも、この同期のズレのほうがクリティカルな問題で、これが大きくなると、二重支払いアタックや、不公正なマイニング(抜け駆け行為)などが、やりやすくなってしまうのです。

どうしてブロックサイズの問題でこれだけ揉めるかというと、そこがポイントです。単に、ブロックサイズを増やして取引が沢山含まれるようにして全て解決するなら、簡単なんですが、この遅延や同期のズレの部分は、ビットコインをそれこそ崩壊させてしまいかねないセキュリティリスクになるので、非常に慎重に議論されています。

なぜネットワークの限界は引き上げられなかったのか?

中国の採掘者によってブロックチェーンが支配されているからだ。たった「2人」の採掘者がハッシュパワー全体の50%を担っている。最近の会議でステージにあがった数人が、95%以上のハッシュパワーをもっているんだ。そして彼らがブロックチェーンの発展を望んでいないというわけだ。

(コメント)たしかに中国のマイニングプールの寡占化は問題で、以前にもGhash.ioが単独で51%を超えることがありました。そのときは、Ghashが自主的にプールを分割しました。現在も中国のマイナーが2,3人結託しただけで51%を超えます。

これは非常に大きな問題で、未解決です。

ただ、彼らがブロックチェーンの発展を望まないからだというのは、かなり彼独特の発想とおもいます。

スケーラビリティの会議で、中国のマイナーが一同に介して90%のハッシュパワーがあつあまったみたいな話がされました。しかし、これらのマイナーたちはお互いに顔を合わせるのが始めてで、お互いに面識がなかったようです。私はこの話をきいて、中国のマイナーというのは、それぞれ勝手にやっているのだなということがわかりまして、ある意味安心したというか、みんなが考えているような、チャイナの結託みたいなのは無いなとおもいました。

マイナーはXTについては、自分たちはブロックサイズの議論はわからない。だからマイナーの投票できめるのは間違いで、判断できない。技術者がぎろんして決めるべきだということを述べていました。

たしかに、この点でも、マイナーの投票という多数決のやり方は間違っていると思います。と同時にマイナーは、仕様変更を判断できないので、コアが正しい方向をむいていないと、間違ったものが採用される可能性もあるということがわかりました。

コミュニティの舵取りがますます重要になるということです。

以上でブログの約1/3です。大変長文のブログなので、続きは、レポートでお読みください。

レポートでは、残りの部分についてもコメントを記載しており、まとめとしてのコミュニティへの影響と、価格への影響についても触れています。

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<続きの内容>

  • どうして彼らはブロックチェーンの発展を望まないの?
  • 中国のインターネットが政府のファイアーウォールによって機能不全に陥っている
  • XTに対するDDos攻撃
  • 民主主義的でないことこそ、ビットコインの最大の美点?
  • Bitcoin Coreは、なぜ上限を維持しているの?
  • デス・スパイラルの始まり
  • XTユーザーへの大規模なDDoS攻撃
  • 見せかけの会議
  • ロードマップなきロードマップ(a non-roadmap)
  • 決済フィーによる解決とプロトコルの変更
  • 結論: ビットコインはすでにかつてない危険海域にある
  • まとめとして: パワーゲームこそがビットコインを本当に破壊する
  • ビットコイン価格への影響の考察

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