仮想通貨の規制法案が提出される:仮想通貨の定義、規制の範囲、事業者・ユーザーへの影響

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金融庁により、仮想通貨関係の法案が国会に既に提出されました。

http://www.fsa.go.jp/common/diet/

これについて、いくつか現時点での理解を書きます。

<仮想通貨の定義>

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために 不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うこと ができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨 及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて 移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって 、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

要するに、支払いや、買い物といった通常の通貨のような感じで使える価値をもつものという定義です。特定の場所や特定の企業でしか通用しないものではなく、不特定の人が受け入れて、支払いなどにつかえるものといった定義です。

プリペイドカードや、電子マネー、企業ポイントは、前払式支払い手段という形で別の法律がありますので除外されます。

また、ゲーム内の通貨などは、ゲーム内でしか使えない建前なので、これも除外です。

要するに、支払いなどに広くつかえるものは、仮想通貨と認定しますよ、ということでしょう。

発行元があるかどうか、分散的であるかどうか、といったことはあまり関係ないようです。

これを考えると、不特定多数の支払いに使えるという意味では、ビットコインだけが対象な気もしますが、ライトコインや、モナコインなども、受け入れているマーチャントはあるので微妙です。これは程度の問題として、役所が個別に指定するのでしょうか?

広く不特定多数ということでしたら、基本的には1項は、現在のところビットコインのみが該当すると解釈できるかもしれません。

次に、2項ですが、要するにビットコインと交換できるものは仮想通貨に含めると読めます。不特定多数のひととを相手にして交換できるものとあるので、つまり、相場が立っていて、ビットコインと交換できる系のコインはすべて、定義に含まれるということのようです。これも、不特定多数というの解釈が問題ですが、取引所に上場しているアルトなどはそれに含まれそうです。

つまり、ビットコイン、ライトコイン、モナコイン、ETH、XRP、FCTや、REP、その他のアルト含めて、ほとんどが仮想通貨と定義されるという、最も広い定義ということになりそうですね。

<規制対象>

定義はともかく、実際に、規制の対象になる業態についてです。

この法律において「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、 「仮想通貨の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいう。

この一文で、政府に登録が必要な業態が示されています。

1 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換

売買ですが、これは取引所や、販売所ということになります。問題は次で、他の仮想通貨との交換とあります。となると、MONA/BTCなどの、ALT/ALTも対象と読み取れます。法定通貨を扱ってないからといって、規制対象から外れるというわけではないようです。

2 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

2項ですが、これも幅広いです。ペイメントプロセッサーや、自身では販売してなくても取り次ぐだけのブローカーや、ATMなども規制の範囲に入ってきます。ShapeShiftみたいな取次サービスもこれに入りそうです。

3 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。

3項ですが、これも解釈によってはどこまで含めるのかわかりません。交換を目的に、金銭や仮想通貨の管理をすることとありますが、これはウォレットのことを言っているのでしょうか?

預かりということでしたら、取引所ということでいいとおもうのですが、「管理」とあるので、ウォレットが想定されているとする可能性も捨て切れません。広く解釈すると、マイニングプールもこれに入りそうです。

例えば、ETHを使うスマートコントラクトで、燃料補給のために随時取引する仕組みとか、Iotの関連でETHをつかって何かおこなうとか、マシンとマシン決済とか、そういうのにも影響を及ぼしそうです。

弁護士や金融庁の見解を聞いただけではなく、単に私が素直に読んだだけなので間違っていることを祈ります。

<登録要件>

さて、この業態を登録できる要件ですが

株式会社又は外国仮想通貨交換業者(国内に営業所を有する外国会社に限る。)でないもの

とあります。個人で作っているサービスはNGとなります。また、別途の条文で財産要件(最低資本金)が課されるとあります。額は明記されていないので、今後、施行令などで具体的に定められるのではとおもいます。

二 外国仮想通貨交換業者にあっては、国内における代表者(国内に住所を有するものに限る。)のない法人

はNGとあるので、海外サービスも国内に支店をつくるなどが必要となりそうです。

海外の取引所については、日本円を扱ってないので普通の人はつかわないとおもうのですが、しかし、ペイメントサービスや、ALT/ALTのクイック交換(shapeshift)や、ウォレットはみなさん使っているとおもいます。またOKコイン先物などは、人民元を入れなくてもビットコインを証拠金に使えるので、利用している人も多いはず。

これらのサービスが規制対象で、国内に支店がないからダメとなると、日本在住者は、どうするのでしょうか。本家が日本進出してくれないかぎりは、使えなくなるか、もしくは、国内の別の業者が取次代理店みたいな形になって、その業者をとおして海外サービスにアクセスするのでしょうか?

実際に厳しい規制がかけられたNY州では、多くの事業者がNY州住民へのサービスを閉じています。ShapeshiftやPloniexもNY州はシャットダウンしていて、NY州の住民はイーサリアムを買うことができないと掲示板に悲鳴がありました。

日本の住民も同じようなことになるのでしょうか?

外国法人への規制は、「国内へのプロモーションや、勧誘を禁ずる」ということで、利用者が勝手に登録するぶんには問題なさそうとのこと

わかりませんが、とりあえず、ぱっと見た感じこんな感じです。

<感想>

印象としては、許認可ではなく登録制となったのは助かりました。紙を一枚だせばいいので、簡単とおもいます。登録後も取引所にとっては、そんなに規制は厳しくなく、さして守るのは難しくないリーズナブルな規制かな、という点は安心しました。

国内ですでに立ち上がっている取引所にとっては、クリアできる条件とおもいますので、法律ができたことによって、疑いなく資金調達も出来るでしょうし、上場も可能になるとおもいます。その点は、極めてポジティブ。

その一方で、対象サービスはもっとも広く網をかけてきた感を受けます。

この文言のままだと、取引所以外の、およそ仮想通貨まわりの事業はすべて対象に入ってしまうのではないでしょうか。

ビットコイン取引所以外のサービスがどうするのか、これが問題となってくるかもしれません。事業者の撤退やあると、海外サービスが日本むけを提供しなくなると、ユーザーは選択肢が少なくなりますし、技術者にとっても、実験的なモデルは、個人で試しにやってみるとは行かなくなるため、摘まれるかもしれません。

もともと取引所を想定した法律のようですが、取引所はいいけれども、それ以外の収益性の未知な事業は苦しい運営を迫られそうです。

もしくは、法律としては広く網だけ張っておいて、実際は取引所だけ適用ですという行政で運用する可能性もあるかもしれません。どこまで適応かは、適時行政にて解釈変更といった具合。

※これについては、この法律を支援していた自民党の福田議員が、Newspicksへのコメントで「取引所だけが対象」と述べています。この発言については法律の文面と齟齬があるので、「そのように運用する」ということと捉えるか、もしくは福田議員も勘違いしているのか、真偽のほどはわかりません。

法律については私は専門家ではないですし、他の法律との兼ね合いなどもわかりませんので、この時点で、これ以上の解釈をするのやめておきます。解釈が変わる可能性もありますので、本エントリの内容は、非常に暫定的な結論です。ですので、専門家の見解として引用されるのはお控えください。

私も、今後、法律の専門家や、業界団体の方と意見交換していきますので、解釈や理解が固まった段階で、追って適時、解説させていただきたく思っております。

専門家と意見交換して、現時点での見解をレポートにまとめました。

こちらを参照ください。

https://doublehash.me/bitcion-regulation-japan-report/

※また、正式に「仮想通貨」という用語になったのですね・・。仮想はイメージ悪いから、暗号通貨としてほしかった。価値記録のほうがまだよかったかも

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