theDAOを評価するための3つの視点ー事業視点、ドットコム株価、分散型革命の始まり

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無題

3つの視点

the DAOの話題が沸騰している。セールを4日のこした現時点で、すでに155Mドル(169億円)もの資金をあつめた。

クラウドファンディング市場最大の資金調達であり、記録を塗り替えた。

さて、このthe DAOだが、評価は分かれている。懐疑的なひともいれば、画期的だという人もいる。それだけ物議を醸すというのは、それだけ新しい概念であるということでもある。

the DAO自体については、この記事がわかりやすいのでこれを読んでもらうとして、私のthe DAOについての見かたを書いておこう。

たった5分、The DAOの基本を10ステップで解説 – クリプトストリーム

私は、the DAOを3つの違う視点からみている。事業としての視点、投機としての視点、DAOの実証としての視点だ。

それぞれどういうことか解説しよう。

事業としての視点

the DAOは、いわゆる投資ファンドであり、ベンチャキャピタルであるといわれる。ただthe DAOが違うのは、株式に投資するのではなく、暗号通貨系のプロジェクトに直接スマートコントラクトを通して接続され、売上の一部を受け取るという事業モデルであるということだ。

たとえばSlock.itの場合、Slock.itの売上の1%がthe DAOに入るといった形で自動配分がなされる。これによってthe DAOは収入をえる。

さて、この場合、本当に主体であるDAOは、儲かるのだろうか?私は非常に懐疑的だ。

たとえば、Slock.itに10億円を拠出し、売上の1%をもらって、その拠出額を回収しようとすると、Slockにおいて1000億円の売上が必要である。

Slock.itが想定するような、ETHを使って、出先のスマートロックを解除しようとするようなユーザーが、1000億円規模もいるだろうか?まだETHには軽量クライアントも無いのに?わたしは4-5年の期間をみても、その数字を見積もることは現実的でないと思う。

そう考えると、the DAOは、投資した元本を回収できない可能性がある。the DAOの事業として見た場合、おそらく利益を上げることなく終わるだろう。Too Earlyだとおもう。これが第一の指摘だ。

また、投資先の選定にも問題が残る。素人の集まりが投資の意思決定を行った場合、良い意思決定ができるかというと、一般には真逆であると考えられる。

投機としての視点

しかしながら、the DAOという事業の持ち分(株式に相当)するDAOトークンはどうだろうか?

これは、the DAOが利益を上げていなくても、価格が上がることはある。

これは、赤字会社の上場を考えるとよいだろう。まだ利益も出ておらず、投資元本を回収できてないが、株価はうなぎのぼりになっている株というのも存在する。その株価にあまり合理性はなく、将来期待というもので、価格が形成される。

つまり、the DAO自体が最終的に事業投資で利益をあげることは出来なくても、当初は、株価(トークン価格)を維持できたり、もしくは暴騰することもあり得る。

たとえば、Ethereum上のイケてるプロジェクトはtheDAO絡みになると予想されるから、slock.itにつづいて面白そうなものが3、4個絡めば、トークン価格は爆発するかもしれない。

自律分散組織の実証としての視点

3つめの視点は最も大事だ。そもそもDAOとは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、自律して分散して動く組織モデルの一般名称でもある。(件のDAOはtheがついてthe DAOである)。

以下、自律分散組織という。

自立分散組織がもたらす社会へのインパクトはとてつもなく大きく、深淵であると考える。今回のthe DAOは、自律分散組織が動くかどうか、運営できるかどうか、といったことの先駆的な実証実験になるだろう。

the DAOの事業としての成功はともかく、自律分散組織としてのプログラムは動くように思う。すこし挙げるだけでも、the DAOが行う組織上の革命的な点は、いくつも上げられる。

・投資の提案、投資可否の決定、投資の実行までのプロセスで人を挟まない。DAOトークンによる株式総会やガバナンスが自動実行される。

・資金の持ち逃げができない。資金をあずかっている中央組織がいない。資金は監査でき、透明で、誰もがその在処や使いみちを、1ETHにいたるまで、リアルタイムで確認できる。この組織の決算はリアルタイムであり、しかも完全監査済みなのである!!

・投資したプロジェクトの売上が直接DAOに入る。Slock.itが売り上げれば、その時点で1%が、DAOの口座に自動的に配分される。それは自動であり、誰かが回収して月に一度計算して振り込むのではなく、Slock.itをユーザーが使った瞬間に、DAOには確定的な配分がなされる。これは奇跡のようなモデルだ。

・DAOトークンは株式のように機能し、自由に譲渡可能で、完全に匿名で保有できるが、theDAOの意思決定に参加でき、利益の配当をえることが出来る。その間には、証券会社も、ホフリも、信託銀行も存在しない。

・theDAOの資金調達自体が自動化されている。the DAOのイーサリウムアドレスにETHをおくることで、DAOトークンが創りだされ、それは完全に透明かつ自動的で、間に誰も存在しない。

他にも画期的な点はいくつもあるが、このような組織モデルが存在しえてくるということのインパクトは、強調しても強調しすぎることはないだろう。

ドットコムバブルになぞらえる

無題

この3つの視点を、1999年のドットコムバブルの様相にたとえてみよう。ちょうど状況がにているとおもうからだ。

the DAOは、ドットコムバブルで上場した会社に例える。その周りに、ドットコム企業の初期に投資したベンチャーキャピタルと、上場時に買った一般投資家がいるとしよう。そして、インターネットを使うユーザーがいる。

ドットコムバブルのときの会社は、ほとんどが赤字上場だった。利益を一セントもだしていないが、株価はついた。

たったひとつのふたつの会社は、その後利益を出すようになったが(amazon.com)、消えてなくなった会社のほうが多い(go.com、pet.com、e-toys、webvan・・・)

つまり、事業主体としての会社は、資本金を回収できず、一セントも利益をだせなかった。事業としてみたら、失敗だったということだ。

しかし、この会社の初期に投資したベンチャーキャピタルは、赤字ドットコム会社の上場で、多額の利益を出したのである。

そして上場株を購入し、その一年後にバブル崩壊で株価が99%下落するなどのジェットコースターを体験したのは、一般投資家である。

ここまでのアナロジーで言うと、the DAOはドットコム会社として利益を上げられないだろう。too earlyである。しかし、これに投資した初期の投資家は、話題沸騰しているピークで売り逃げることで、莫大な利益を上げられるかもしれない。

一方、インターネットそのものはどうだろうか?1999年はバブルであったし、ドットコム企業は利益をださなかったし、その1年後に悲惨なバブル崩壊を体験したが、はたしてインターネットが私たちにもたらした革命的な点は、それによって毀損されただろうか?

Noである。インターネット革命は、いずれにしても重要であって、あれから15年かけて、世の中を大きく変えてしまった。

コミュニケーションの方法を変え、情報に国境をなくし、商流を変え、いくつもの中間業者を破壊した。人々は今更インターネットがない世界を想像すらできないだろう。

同様のアナロジーで言うと、the DAOが利益を出せるか、DAOトークンの投資家が儲かるかどうか、それは、今後の分散型革命が社会にもたらすインパクトを考えるとき、まあどうでもいい話である。

3つめの視点、分散型組織が今後どのように社会をかえていくか、インパクトをもたらしていくのか、これが、もっとも大事な点である。分散型組織による革命が進めば、ユーザーは大きな利益を得て、社会はより豊かになるだろう。もはやインターネットがない世界が想像できないように、分散型でない組織モデルを使うことが想像できなくなるかもしれない。

その実証実験として、立ち上がったthe DAOは、どのような結末を迎えてたとしても、その意義は大きい。

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