レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)
マウントゴックス(Mt.Gox)のマーク・カルプレス元CEOが逮捕されたとの報道を受けまして、3つ現状認識と、未来への2つの視点を、書いておきます。
<現状況の認識>
・マウントゴックスの破綻後に、業界は急成長した。
マウントゴックスが破綻した2014年3月というのは、むしろビットコイン業界においては、転換期だったと思います。この次期を境に、多くの企業が新しくこの業界に参入し、現在までに累計800百万ドル(約1000億円)のベンチャーキャピタルの資金が提供されました。
マーク・アンドリーセンや、ティム・ドレイパー、ピーター・ティール、伊藤穰一など、多くのエスタブリッシュメントも、ビットコインに注目し、無数のスタートアップが立ち上がって、業界の厚みは、1年半前とはくらべようにもないほど厚くなっています。
新しいものが次々と生まれており、技術の進歩もまさに日進月歩です。
CITI BANK、バークレーズ、UBS、ゴールドマン・サックス、ABNアムロ、DNSその他12以上の世界的な金融機関が、
逮捕自体に関しては、Wizsec社の調査の段階から内部犯罪は予測されていたことであり、新しいものではありません。ビットコインの価格もニュースには反応しておらず、織り込み済みであることがわかります。
ビットコイン業界においては、マウントゴックスの話は完全に消化済みであり、過去のものになっています。今後どのようなニュースが出ても、なんの影響もないでしょう。
・債権回収以外のイシューは残っていない
完全にマウントグックスは過去のものとして忘れられています。ビットコイン系の会合にいっても、マウントゴックスの話はここ半年くらいは一度も聞かれたことが無いです。
世界中で開かれているビットコインカンファレンス(先日日本でもデジタルガレージ主催によるNEW CONTEXT CONFERNCEが開かれました)でも、マウントゴックスの話は一切出てきません。
もちろん債権者がおりますし、私も相当量のビットコインを失い痛手を受けています。債権者にとっては、最終的な解決を見るまで、重要なイシューであることは確かです。
しかし、逆にいえば、債権回収というイシューを除けば、マウントゴックスの話はすでに終わっていて、なんのイシューにもならないということでもあるのです。
マウントゴックスは、すでに債権者とマウントゴックスという2者間の問題となったといえます。ビットコインの業界の問題としては位置づける必要はないと考えます。
・ビットコインの価格の歴史についての理解の修正
もし、Mtgoxがボットをつかい、水増ししたお金でビットコインを買い上げていたのなら、2013年の1000倍の価格上昇はすべて自作自演だった可能性があります。
2013年の2月ごろからおこった10ドル→250ドルの上げ、その後の2013年10月ごろの100ドル→1100ドルの上げというのが、フェイクだった可能性があります。
もちろんマウントゴックスの水増し資金の量がどれだけだったかによりますが、もしその影響が大きいとすれば、ビットコインの過去の価格の動きについては、修正が必要だと思います。
ただ、現在の価格についての疑念を生むことには直ちにはつながりません。現在は取引は十分に分散されていますし、はるかに厚みがでてきており、一社の水増しで価格が100倍になることはありえません。
<未来へ>
さて、今後マウントゴックスのような問題がおこらないためにはどのようにしていくべきなのでしょうか。2つの視点を提示します。
・Single point of Failure
マウントゴックスが示したのは、分散化されたビットコインにおいても、結局、中央集権で運営している場所に、失敗が起こるという、まさに皮肉のような話でした。コインを送ったあとの管理はブラックボックスで、MtGoxを無制限に信用せざる得ない。
人間の信用で運用しているところは、「必ず」こうなります。最悪の事態は常に人間の信用のところで起こります。
このように、人間の信用でやっているところに対しては、嘘をつかないように、法律をつくって罰するとか、そういうタイプの規制の方法がとられてきました。従来は、そういうタイプの規制の積み重ねで作られています。
ビットコインもそういう規制で守らないとだめだという意見をいう人がいます。
一方、ビットコインなどの分散プロトコルの考え方は、無信用の考えが根本にあります。つまり、人間の信用を廃します。徹底的に排除してゼロにします。だれも信用する必要がなく、動くのです。
掲示板でこのような意見がありました。
>仮想通貨は監視・運用のための法整備が 追いついてない
これは、分散型のプロトコルに対する世間の理解の難しさを示しています。ビットコインでは、そもそも監視・運用が自動化されていて必要ないのです。中央の監視者が不要なのです。
つまり、人間を信用する部分がゼロなので、規制や罰則による運用自体が必要なのです。この部分はなかなか理解されにくいかもしれません。
・ゼロトラストプロトコルによる自己解決を
今後の取引所はどうあるべきでしょうか。私は、(消費者保護に関しては)法律による監視・運用よりも、テクノロジーによる解決すべきと考えます。
例えば、マルチシグによるビットコインの保管です。これなら、取引所一社だけで、勝手に持ち逃げはできません。Bitfinexなどの大手がすでに導入しています。
ビットコインがどこにいくらあるかがリアルタイムで証明できるソルベンシーの公開をしている取引所もあります。BitReserveなどがそれに当たります。
分散型取引所、Coinffeinceは、取引自体を分散的に構築するものです。約定の瞬間まで自分の手元にコインをおいておくことができます。取引所や、取引相手が持ち逃げすることができません。
また、Counterpartyなどのアセットプロトコルには、分散取引の機能がすでにビルトインされています。Counter party上の暗号資産と暗号資産の取引であれば、すでに、取引所を一切信用することなく、無信用の経済が作れる可能性があるのです。
私はこのような方向性で、安全性と、透明性を確保していくべきと思います。規制や監督によって、人間にたいしてこうしろと指導するのは古い。というか、いままでは、そのようなやり方しかなかったのでしかたないのですが、そういう人間による監督指導というやり方をしなくても、プロトコルによる自動運用、ゼロトラスト、無信用で、当事者同士だけで取引を完結することができる仕組み 、それが、ビットコインの発明の根幹なのですから、を推し進めていって、人間による監督指導を廃し、すべてをプロトコルに委ねるべきです。そうすれば誰も不正ができません。
消費者保護に関しては、ビットコインのテクノロジーの進化と、業者間の競争で自己解決するほうが早いし強力とみています。
(一方、アンチマネーロンダリングの規制がありますが、これは消費者保護とは別の視点ですので、ここでは触れません)
もちろん、法定通貨(Fiat)をあつかう取引所は、Fiatの部分については、暗号通貨のようにマルチシグにするとか、そういう風にはできませんので、依然として、監督官庁によって、Fiatの取り扱いについて規制をされて監視されるという部分は必要になりつづけるかとおもいます。それは致し方ないのは理解します。
しかし、こう考えると、Fiatというのはとても不便なものです。古臭く感じてしまいます。日本円もすべて暗号通貨ベースで発行して、マルチシグなどができるようになれば、そんな監視や、日本円は分別管理して、信託銀行に預けなさいとか、そういうのは、暗号通貨の世界では不要です。できれば、すべてのお金が、暗号通貨ベースになり、プログラミング可能になることが、望ましいと考えています。
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