ビットコインテクノロジーはキャズムを超えられるか?5つの戦略を分析する

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ForbsのHow will Bitcon Technology Go Mainstream

という記事が興味深い。

ビットコイン及びブロックチェーンのテクノロジーがいかにして普及のためのキャズムを超えられるのかという記事である。

この中で、キャズムを超える方向性として、この界隈のプレイヤーの戦略を交えながら5つの方向性を示している。

簡単にまとめておく。

1)ビットコインそのもの

ビットコイン自体の普及を後押しして、キャズムを越えようというもの。Coinbase, Bitpayほか、ウォレットの会社や、エクスチェンジはこの路線だ。

ブロックチェーンの応用は興味深いとしつつも、もっとも重要なビットコインとそのブロックチェーンにフォーカスする戦略だ。

インターネットのときがそうであったように、当初人々は公共のネットワークに繋ぐのを躊躇し、社内のイントラネット構築に走った。それはそれで有用だったが、結局、インターネットに回帰した。

デジタルカレンシーグループのバリー・シルバートは、「ビットコインの主な用途が投機であり、それがキラーアプリであることは悪く無い」としている、それを通じて市場に厚みができ、マイニングが行われ、セキュリティが保たれる。

しかし、ビットコイン一本に絞るのは、会社の戦略としては狭く、リスキーという指摘もある。ビットコインの採用が思うように広がらなければ、これらの会社は行き詰まる。そして、実際苦戦している。

2)フィンテックのソリューション

ビットコインそのものではなく、安い国際送金のように、具体的なソリューションの形でサービスを提供する。裏ではビットコインを利用するが、ユーザーはビットコインそのものを意識しなくてよい。

これは、P2Pペイメントを目指すCircleや、国際送金のAbraなどが取る戦略だ。

彼らは、ビットコインそのものにはフォーカスしないが、世の中の顕在化しているニッチな問題にフォーカスしている。

例えば、国際送金はその際たるもので、8%にも及ぶ高い手数料や、幾つもの銀行を経由して途中でわからなくなってしまう送金など、現在のシステムの問題点を解決しようとしている。フィリピンの船員は太平洋の真ん中で給与を受け取るが、小切手を受け取っても仕方がない。その場で受け取り、家族に送金でき、ATMでも引き出せる。そういったニーズがある。

このプレイヤーたちは、これらの解決方法として、ビットコインを利用する。一方でUpholdのような、ビットコインの他に、独自のブロックチェーンで、28の通貨を管理する会社もある。

これらは、現実の問題の解決にフォーカスし、そこにビットコインが利用できると考えているプレイヤーであり、ビットコインそのものを起点とするプレイヤーとはまた違った角度から戦略を構築している

3)企業向けソリューション

ビットコインそのものや、仮想通貨ではなく、ブロックチェーンテクノロジーの部分を企業の業務プロセスの改善に役立てようという方向性だ。

いま多くの企業が、この方向にシフトしており、昨年は、銀行と中心に熱狂ともいうべきブームがおきた。

デロイトは「ビットコインはブロックチェーンのユースケースの一つ」といい、「ビットコインはその最初のものだが、重要なチェンジをおこさない」という。

ビットコインはネット上のデジタルゴールドとして一定の地位を保つだろうし継続するだろうが、その市場にくらべて、銀行や、保険、リワードポイント、その他、ブロックチェーンの採用するすでに存在する企業の市場のほうが、数桁大きい。

この分野の代表はChain.comだが、すでにNasdaqと提携してプライベートマーケットのLinqを立ち上げ、自身の会社の株式をブロックチェーン上で発行した。

Chain.comは、テレコム、保険、ペイメントほか、多くの企業と提携し、実証実験を行う。7-10のプロジェクトが立ち上がる予定だ。「スローダウンの気配はない。さらに多くのサポートを受けているし、資金も得ている。青信号だ」

ビットコインがどれだけのユーザーを獲得しようが、VISAやCITIそのた、Chain.comのパートナーの顧客のベースには遠く及ばない。

「もし、どこかの銀行が、世界中の送金を0.5ドルで行うプロセスを構築したら、それはゲームチェンジャーになるだろう」

4)金融コンソーシアム

R3のような銀行コンソーシアムだ。すでに42の銀行が参加しており、ビットコイン、イーサリアム、リップルなどのプロトコルを検討している。

銀行のための研究機関という位置づけであり、共同で、これらのテクノロジーの実証実験を行うとしている。国際送金のプラットフォームなどにおいて、新しいプロトコルを開発することを目的としている。

巨大バンクの連合は、大きなポテンシャルをもっているが、それほど機敏にはうごくことができない。

「多くのプレイヤーを巻き込んでいるため、キッチンのリノベーションするのではなく、次の家を建てようと考えて動いている」

しかしながら、ビットコインのプレイヤーからは冷ややかな目で見られている。「ビットコインのような公共の非中央集権の仕組みが、歴史上において、イノベーションの触媒になってきた。世界中のどの会社でも、面白い応用を思いついたら、すぐにビットコインのブロックチェーンの上でアイデアを実行できる。それをするのに、誰の許可もいらない」

コンソーシアムの許可が必要で、動きが遅い、メガバンク連合が、イノベーションの触媒になれるかどうかは疑わしい。

5)インフラとして

インターネットの歴史を紐解いてみれば、ドットコムバブルで沢山の企業が立ち上がった。pets.comは、その代表の企業だが、すぐに姿を消した。

一方で、ciscoのような企業は、いまでは大きく成長している。

つまり、pets.comになるのではなく、インフラを提供するようなciscoのような企業は生き残るということだ。同じようなことが、ビットコイン・ブロックチェーンでも起こる。

「インターネットの25年の歴史を考えよう。人々は、それぞれ独自のバージョンのインターネットを構築しようとした。どの国も、どの企業も、どの研究所も、どの大学も。しかし、ある時点で、共通の基盤に接続することになった」

さて、私はどう考えるか。

現時点での結論であるが、2つの方向があるだろう。一つはビットコインそのものがキャズムを超える可能性は十分にあると見ている。ただし、送金などのアプリは、非常にゆっくりと、インフラが整うまでは立ち上がらないだろう。エクスチェンジが十分に出来、世界中の法定通貨との流動性が十分高まったとき、2のユースケースにあるようなアプリが出来るだろう。そしてキャズムを超える。それまでは、地道なインフラの構築が必要で、まだ3-5年かかる。

その間を支えるのは投機としての体験だ。ビットコインのトレードが提供する投機体験は、他のどの資産を超える魅力がある。24時間、低手数料、瞬時に世界中で取引でき、資金を移動できる。つまり、すでに投機の世界ではビットコインはキラーアプリとなっており、多くのプレイヤーがこのゲームに参加するだろう。それにともなって、流動性、厚み、通貨ペア、先物やオプションなどのデリバティブが整備され、現実的なユースケースに耐えられるだけの金融基盤が構築されるだろう。

次の方向性は、エンタープライズ内でのブロックチェーンの活用だ。うまく活用すれば今までの仕組みがあまりにレガシーだっただけに、大幅にコストを削減できるだろう。

ただし、わたしは大企業や、既存の金融機関がこれを活用することになるとは思わない。つまり、エンタープライズ向けのブロックチェーンを活用するのも、それもまたベンチャー企業だろうということだ。つまり、ゼロから立ち上げ、基盤にブロックチェーンのレジャーを採用するネットバンクや、送金業者といったものだ。こういった企業が、口座維持手数料なし、24時間運営、送金手数料無料と言ったサービスで市場に殴りこみを掛けるというシナリオだ。

つまり、ブロックチェーン・テクノロジーを金融機関向けに提供するビジネス・サービスを行うのではなく、フィンテックベンチャー自らがブロックチェーンで武装して、既存の非効率な大手金融機関に戦いを挑むという構図だ。

1-2年以内に、(法定通貨の)ブロックチェーン銀行が生まれるかもしれない。

わたしは、後者の動きのほうが早い可能性もあるとおもう。ただし、いずれ前者が、全く別のユーザー体験をもって、徐々に優位性をもって巻き返してくるだろう。

いずれにしても、ユーザーはどちらかを選ぶわけではなく、併用できる。VISAを使うとともにビットコインを利用し、ネット銀行の送金を使うとともに、ビットコインでも送金できる。多様なサービスと選択肢が生まれることは好ましいことである。

 

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