ASICとマイングアルゴリズムのイタチごっこと分散化について

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)

Moneroのマイニングアルゴリズム変更が話題になっている。

従来Moneroのマイニングは汎用の計算チップ(GPU)を利用してマイニングがされてきたが、この度、中国のBITMAIN社が専用のASICチップを搭載した専用マイニングマシンを出荷するとした。
ASICを利用することで、マイニングにかかる速度や電気代が飛躍的に向上するものと思われる。もちろんマイナーにとっては悪い話ではないが、問題は、マイニングの中央集権化をもたらすことになるということだ。つまりASICの効率があまりに良いので、事実上それ以外の方法でマイニングを行うことはコスト倒れに終わることに成る。したがって、すべてのマイナーがASICの専用マシンを購入することになる。当然ながらMonero用のマシンを作っているのは現時点でBITMAIN社1社なので、彼らがMONEROのマイニングを事実上独占するということになってしまう。非常に中央集権になる。

実際にもビットコインでこのような傾向は起きている。ビットコインではASIC以外の方法でのマイニングは行われていない。
BITMAIN社は、現在でもビットコイン用AISCマシンの殆どを供給しており、寡占状態がつづいている。更に、BITMAINのマイニングプールは、変動はあるもののおよそ全体の30%ものハッシュパワーを持っているとされる。この影響力の強さから、昨年のビットコインの分裂騒動では政治的なゲームが加熱し、マイナーの発言力が今まで以上に強くなったといえる。

Moneroは、開発者が緊急のハードフォークを提案し、マイニングアルゴリズムを変更するようだ。
マイニングのアルゴリズムを複数用意し、ブロックごとに切り替えるという方法を採用するようだ。前のブロックのハッシュ値(ランダム)から、次のブロックで何のアルゴリズムを利用してマイニングするかを決定するという方法と聞いている。
従来の汎用チップ(GPU)を利用するマイナーは、ソフトウェアの変更で対応でき従来どおりマイニングできるが、ASICを利用するマイナーはアルゴリズム変更によりマイニングできなくなる。

従来こうしたアルゴリズムは専用チップが作れないように設計されたものだが、LitecoinのScryptを筆頭に、結局ASICが開発されたものも少なくない。BITMAIN社は、Ethereumのマイニング用にもASICを開発したとアナウンスするなど、コイン開発者とASICとのイタチごっこが続いている。

マイニングの分散化は難しい問題だが、いくつか解決の方向性がある

3つは、アルゴリズムにAISC耐性をもたせるようにすることだが、イタチごっこの面があるのは否めず、またアルゴリズム変更にはハードフォークが必要となり必ずしも合意が得られるとは限らない。コインが2つに分裂してしまうことも考えられる。すでにASICを購入してしまったマイナーは、ASICがゴミになるのは避けたく、古いコインを維持するインセンティブが働くだろう。

2つ目は、ASICの図面のオープンソース化である。ASIC自体をオープンソースコミュニティが設計し公開の仕様とすることで、多様な製造メーカーの参入を招き、一社による寡占供給を防ぐ。AISCは許容するものの、より競争的な環境を作るものだ。コインの開発者はソフトウェア開発者だけに限られていたが、今後のコインはマイニング用のチップ設計のチームが加わり、全体がオープンソース化するかもしれない。

3つめはブロックチェーンの衛星配信による地理的な分散だ。マイニングはごく一部の地域に集中していた(以前は中国)。電力供給や設備の問題から最適地がきわめて限られる。サテライトシステムによる衛星配信で、砂漠などでも自然エネルギーを利用したマイニングなどが可能となれば、候補地が増え、より分散されるだろう。

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