レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)
イーサリアムやリップル(XRP)が証券として扱う方針をSECが示しています。これらだけではなく、ほぼすべてのICOを行ったトークンが証券に該当するという見解をSECは示唆しており、適用除外をめぐって激しいロビー活動がされています。
この問題について、整理してお伝えします。
まず、米国の証券というのは定義がが広く、形式上はトークンなどの形をとっていても、実質的に証券性があれば、証券とみなされます。
証券とみなす基準については、1933年のHowey基準ものが長らく適応されています。
これは、
(1)発起人又は第三者の努力にのみ依拠した (2)共同事業からの (3)収益を期待して行われる (4)金銭の投資
という4条件があるものは証券(投資契約)であるとするものです。
なにを言ってるのかわかりにくいのと思うので、誤解をおそれず単純化すると、
「他人の努力や成果に対してお金を投じてリターンを得る契約」
はすべからず証券であるといっています。
他人の努力云々というのは、投資家は要するにお金を出すだけでよく、そのコインなりが値上がりするかどうかについての努力やマーケティング、開発などを、特定の主体にお願いしちゃっているとう意味です。(それってまさに「投資」ですよね。)
リターンを得る契約というのは、コインの値上がり期待のほか、プロジェクトからの収益を受け取ることができるようなものは証券だといっています。プロジェクトの配当をコインホルダーに行うもののほか、ICOのときに値上がりによる収益をうたったりしているのものもダメですよね、ということです。
ではどうすれば証券でなくなるのかということですが、やはり値上がり期待や配当するのは一番まずいです。そこで「ユーティリティトークン」という概念が考案されました。これは、なにかの利用価値をもつトークンだということです。たとえば、そのトークンを消費すると、ディスクスペースが使えたり、計算が行えたりと。
ETHは、イーサリアム・ヴァーチャルマシーンという分散コンピューターに計算依頼するためのトークンとして設計されました。ですので、トークンの保有は投資目的ではなく、計算依頼という実用を目的として、コインを購入するのだというロジックです。これなら証券性を排除できます。
しかし、イーサリアムで問題になっているのは、ICOのところです。
ICOは、ETHを確かに販売し、その資金で初期の開発をすすめました。資金調達から、実際のイーサリアムのジェネシスブロックのローンチまでの期間は1年ありました。ここが問題とされています。
つまりこの期間は、もっぱらイーサリアムの開発者という他人の努力にたいして資金提供し、ローンチが行われればETHが取引所に上場されうのでリターンを生むという契約に見えます。これはまさに証券です。
このロジックでいうと、プロダクトが完成していない状況でICOを行ったコインは、すべて証券に該当するということになります。
イーサリアム側は、本拠はスイスにあり、現状のイーサリアムには証券性がないと主張しています。現状はそのとおりとおもいますが、この初期の部分をどうクリアするのかは、不透明です。
XRPも同様に、もっぱらリップル社が開発やマーケティングを行い、コイン価値をコントロールしており、リップル社という他人の努力にたいして、値上がり益を期待しているため、証券のように見えます。またリップル社は米国法人です。
リップル社は、XRPはリップル社の設立以前に発行されており、またXRPはリップル社と独立したトークンだと主張していますが、この言い分が通るのかどうかは不透明です。
さて、こうなると、ほとんどのコインが米国法で証券とみなされるという自体は想定されうるということになります。とりわけICOを行ったコインはすべて証券となるでしょう。
さて影響ですが、コイン運営側と取引所側の2つの視点があります。
まずはコイン運営側。
・SECへの登録を要求される(ハードルは高い)
・登録できなかったコインは米国内では違法
です。登録には資金の使いみちほか、透明なガバナンスと情報の公開が必要ですが、ハードルは高いです。
コイン運営側の最大のリスクは、過去のICOの部分について違法性をとわれることです。悪質なものは、罰金や懲役を食らう運営者も出てくるのではないかと推測されます。とくに発行主体が米国内にあり、米国人に販売してしまったものについては厳しそうです。
次は取引所側です。
・SECに登録してないコインはそもそも扱えない
・登録されたコインであっても、取引所自体がSECに登録しないと扱えない
・SECに登録している取引所は現在ゼロ
という状況です。CoinbaseがSECに登録すべく頑張るようですが、時期や見通しは明確ではありません。
もともと米国内では、いわゆる草コインのトレードは行われておらず、そういう意味では現状の影響はすくないのかもしれませんが、今後、SECに登録できない草コインは永久に米国内で取り扱われることはないということになります。
さて、いままでの議論ですが、すべて米国内のものです。コインの発行体が海外で、米国人が絡んでなければ、いままで通りトレードが可能です。つまり、Binanceなどのオフショアの取引所では、ひきつづきトレードは提供されると予測しています。ただし、明確に米国で違法となると、Binanceなどもうっかり米国人にそれらのコインの売買を提供してしまうと、米国からとやかく言われることになります。これは大きなリスクになりますので、そのあたりを鑑みて、一斉に草刈り(上場廃止)が行われても致し方ないともえいます。
さて、いままで、証券とみなされるリスクについて書きましたが、
SECが証券でないと認めたコインはどれになるのでしょうか?
少なくともビットコインは証券ではないと認めています。
他のコインに関しては、次のような少数のものになるでしょう。
・ビットコイン
・ビットコインキャッシュ
・ライトコイン
・ダッシュ(Dash)
・モネロ(Monero)
Zcashは、残念ながら初期にプライベートな投資家から資金提供を受けており、その見返りとしてコインを渡す契約がされています。これは証券です。
一方、ICOを行わなかったコインは証券をまぬがれるかもしれません。つまり、資金提供を受けず、すべて無償のエアドロップなどの形で配布したものです
・NEM *[1]
・Byteball
などがそれに当たると思います。また、Bitcoin Goldなどのフォークコインも問題ないでしょう。
なお、国産MONACOINは当然証券ではありませんが、米国内ではそもそも取り扱っていないためあまり影響はないでしょう。
*[1] NEMの初期配布が無償だったか、有償だったかについては当方正確に事実を把握できかねております。有償であった可能性もあります。
・おしらせ
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