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配当型トークンの価値算定の理論と実例

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ユーティリティトークンの価値算定につづき、配当型のトークンの価値算定の方法と実例を示します。

配当型のトークンとは、つまり証券そのものになります。証券の価値の算定方法については、ファイナンスの授業をとっていただければわかるように、スタンダードなものが存在します。

つまり、

「将来受け取れるキャッシュフローの合計を現在価値に割り引く」

というものです。DCF法と呼ばれます。

株式投資に馴染んでいるひとは、年間の1コインあたりの利益とPERで算出という方法でも良いです。(どちらも実質的に同じ計算です)

実際に、配当トークンとして最も古いであろうAugurを実例にして計算してみます。

以下の記事はAugurのICOの時(2015年7月)に、私が投資判断材料として計算して公開したものです。(読んだことがある人もいるかも知れません)

なお、本記事執筆時点でのAugur(REP)は、29.56ドルのようです。

Screenshot from 2018-04-16 11-01-13

以下過去記事引用

augur

<市場と収益性はあるのか?>

さて、Augurですが、どのくらいの市場があり、REP保有者はどのくらいの報酬を稼げるのでしょうか?

REPは、他の暗号通貨のように需給でしか価格が決まらないものと違い、トレーディングフィーの配分を得られるという性質がありますから、配当付きトークンと考えると、株式に近い性質があり、価格の計算は可能そうです。

Augurもその額を算出していますが、算出根拠が不明で理解できないため、あらためて独自に見積もってみます。

Augurの取り扱い掛け金のうち、およそ2%がトレーディングフィーとして配分される原資になります。そのうち、1%は賭け事を設定したマーケットメーカーの取り分、のこりの1%がREP保有者の取り分になります。

ですから、取り扱い額の1%というのがREP保有者への配当ということになります。果たして、これはどのくらいの規模が予想されるのでしょうか。

世界中の予測市場のマーケットがどのくらいになるかは、まったくデータがありませんが、オンラインのギャンブルの市場規模から見積もってみます。

世界のゲーミング(ギャンブル)マーケットは、およそ400Bドル(50兆円)で、そのうち10%程度がオンライン化しているという統計があります[1]。

他社のデータでも[2]、2015年のオンラインゲーミングのマーケットが、約40Bドルとなっており、およそ日本円にして5兆円というのが実際のところのようです。

この大きさにはびっくりしました。本当かよ、と思いますが、たしかに日本のパチンコ産業が20兆円ですから、本当にこのセクターは市場が大きいのでしょう。新しい技術はエロとギャンブルからというのはごもっともかも知れません。

[1]http://www.viaden.com/products/gambling-industry-facts.html

[2]http://www.statista.com/statistics/270728/market-volume-of-online-gaming-worldwide/

さて5兆円は、カジノやロトを含めたものですので、いわゆるブックメーカー分だけを計算にいれます。この内訳グラフによれば、Wageringという賭け事が、ブックメーカーのような、スポーツ結果などの未来予測に賭けるものだとおもわれて、全体の39%にもなるようです。

以上のデータから、年間のオンラインブックメーカーの市場は、およそ

5兆円 x 39  % = 約2兆円

であると考えられます。

このうち、Augurがどのくらいのシェアをとって代替するかを計算して、REP保有者の取り分である1%をかけたものが、年間収入になります。

シェア1%   =Augur取扱高 200億円/年   * 1% = 2億

シェア5%   =Augur取扱高 1,000億円/年  *1% = 10億

シェア10%   =Augur取扱高 2,000億円/年  *1% = 20億

計算してみると、なかなかの数字です。数年以内にあり得るケースとしてシェア1%の場合、REP保有者全体で、2億円の収入ということになります。

<損益は?>

さて、となると、REPの値段はいくらが妥当で、将来どのくらいまで伸びそうでしょうか?

REPは、先ほど解説したように、オークション制で定価販売ではありません。最後になるまで、いくらで買えるのかはわからないのですが、仮に、どのくらいの範囲であれば買って損はないかというのを考えてみましょう。

先程は、Augurがオンラインブックメーカー市場の1%を取るというケースで考えてみます。

(Augur自体はプロトコルなので、Augurを利用して自社サービスを提供するブックメーカーの比率が1%になると理解してください)

この場合REP保有者の収入は2億円なので、これをトークンの総数11Mでわると、1REPあたりの配当が18円/年です。

ただし、これは単年度の配当ですから、株式のように将来の配当までを含めた現在価値にすると、たとえば、PERが5倍(割引率12%)と保守的にみつもった場合、1REPあたり90円くらいになると思います。

これはシェア1%のシナリオなので、もしAugurが当たって、シェア10%になるなら、この額も10倍になります。プロトコルですから、採用比率はもっと高くなる可能性もあります。また、PERをもっと高くとって20倍にすれば、更に4倍になります。そのようなシナリオでは、1REP=3,600円以上ということになります。

以上の数字はざっと調べただけなので、これらの数字が本当に妥当かどうかは、必ずご自身で検証されてください。

 

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