ビットコインやサイドチェーン、Ethereumなどの基盤の上に、「分散型予測市場(distributed prediction market)」が今年中に幾つか立ち上がりそうだ。
ビットコインは、まだキラーアプリがないといわれてるが、予測市場は成功すればその候補となり得るだろう。
予測市場とは、一種のギャンブルで、世の中のある未来について人々が予想を行う。
例えば、次の米大統領選挙でどちらが勝つか、次のワールドカップで度の国が勝つか、などを対象にして、ビットコインなどの仮想通貨で掛ける。
いわゆるオンラインブックメーカーに近いが、単なるギャンブルの仕組みではない。
ブックメーカーと違うところは、オッズないところと、分散型で胴元がないところだ。
・オッズがない
ブックメーカーの場合、勝ち負けのオッズは、胴元が提示する。次の大統領選挙でヒラリー・クリントンが勝つと胴元が思っていれば、その比率を提示するのは胴元だ。
予測市場では、このオッズ自体を大衆が予想する。ヒラリーが勝つと思う人が多ければ多く、掛ける人が多ければ多いほど、ヒラリーのオッズは高くなる。
つまり、これは大衆による未来予測だといえる。みんな自分をカネをかけるので、真剣に予想するようになる。
独立して予想する人が十分多ければ、その予測は、専門家の予測よりも精度がよくなるという、Wisdom of Cloudという統計的な証拠も存在している。
・分散型である
今回の予測市場は、分散型である。つまり、胴元が存在しない。ビットコインのように、中央の管理機関なしに動く予想市場なのだ。
これはどういうことか?賭け事は胴元がつくるのではなく、ユーザーが好きに立ち上げることができる。そして、スマートコントラクトの技術により、掛け金は、ブロックチェーン上でエクスローされ、結果にしたがって、自動的に分配される。
お金を持ち逃げできず、人間が分配するのではなく、プロトコルが自動的に分配する。これ自体がDAO(自立分散組織)である。
予測市場は、過去にもいくつか実験されてきたが、胴元が存在したため、何回も政府による取り潰しにあった。たとえば、テロが起きるかどうかといったことが予測の対象となり、予測が事実を引き起こしてしまうリスクがあることが指摘されている。
今回は、ビットコインのように胴元が存在しないため、シャットダウンにあわないと開発者たちは提唱している。
・分散型で事実を認定する
さて、賭け事が行われたあとに、たとえば大統領がどちらが勝ったかを認定する必要がある。コンピュータの世界の入力としてつかう、現実の世界の事実のことを「オラクル(信託)」と呼ぶ。*データベースの会社とは関係ない
予測市場の最大の発明は、このオラクルを、分散型で行うことだ。
胴元がないのだから、だれか一人が認定するわけにはいかない。分散型で、参加者全員で、どの事実がおこったかを合意に達する必要がある。
詳細は、別の記事で書こうと思うが、簡単にいうと、正しい事実を報告したほうがリワードを得られるというインセンティブの仕組みをつくる。正しい事実を報告すれば、儲かり、嘘を報告すれば損をする。正しい事実を報告する正直者が51%以上いれば機能する。ビットコインのマイニングに似ている。
・応用
予測市場の仕組み自体は、アプリケーションではなく、プロトコルだ。最初の応用は、ギャンブルサイトということになるだろうが、これはもっと汎用的に使える。
たとえばデリバティブはまさにこの予測市場の仕組を金融にしたものである。天候デリバティブや、将来の為替の予測など、それに賭けるひとが十分大きければ、デリバティブとして機能する。
そして、それは、つまり、保険としても機能するということになる。
ズバリ言って、P2Pデリバティブ、P2P保険のプラットフォームであると言ってもいい。
・実装
予測市場プロトコルの実装自体は、いまのところメジャーな2つが進んでいる。
Augurは、Ethereumをベースにした実装で、現在コードが上がっていて、プロトタイプが動いている。
Truth Coinは、Sidechainを使った実装で、開発の状況は把握していないが、予測市場プロトコルの最初の提唱者が行っているプロジェクトである。