Digital Asset Holdings がHyper Ledgerを買収というニュースが耳にはいった。ビットコインのコンシューマ向けの流れとは別に、金融機関(銀行)向けに、分散型台帳をソリューションとして提供する企業が目立ってきている。rippleはその代表格だ。
金融機関だけを見ると、彼らは貨幣としてのビットコインには興味はなくその背後にあるブロックチェーン技術に興味がある。より効率的で、コスト削減の可能性があるからだ。
おそらく銀行は、限られた信用できる銀行同士でネットワークを組み、外部からは参照できない形のprivateなブロックチェーンの構築に興味があるのだと思う。
現在この流れを調査しているが、その前にいくつかフレームワークを提示していく。
トランザクションの中身やデータが公開されているかどうかと、マイニングや認証するひとが誰かということで、4つのタイプに分けることができそうだ。
(Four type of distributed ledger. by Tetsuyuki OISHI)
上の図が、それである。最も広い概念として、分散型台帳(distributed Ledger)があり、4つのタイプに分類できると考えられる。
分類の横軸は、レジャーのトランザクションが公開されているかどうかだ。ご存知のビットコインは、トランザクションが公開で、誰もがアクセスできる。そして、トランザクション内容も誰もが解析できる。
そして、それを認証するマイナーは、任意のマイニングノードであり、誰もが参加できる、No trust である。そのためPoWなどの計算量に応じたコンセンサスプロトコルを採用する。
公開型のトランザクション、No trustのマイニング。すなわちこれがビットコインほかの暗号通貨のブロックチェーンである。
一方、金融機関が志向しているものは、真反対だ。図で言うと右下にあたる。閉じられたネットワークで、外からトランザクションは参照できず、信頼できる限られたノードによりコンセンサスを行う。コンセンサスのプロトコルは、PoWである必要はなく、Trustがあるので、いくつかのノード間の相互合意型の承認でよい。
Hyper Ledgerなどは、このタイプと考えられる。これは自行内の管理や、自社で国際ネットワークのある金融機関内でのトランザクション処理に向いているだろう。専用ネットワーク、専用ノードによるクローズドなシステムになるだろう。
rippleは、コンセンサス部分は、限られたノードによる相互認証であるが、レジャー自体は一般に公開されている。図で言うと、左下にあたる。金融機関がこれを採用する場合がどういう場合かを考えているが、銀行間のトランザクションでレジャーが公開されていても良い場合は限られる。むしろ、政府が検閲出来るように、国際間の取引では、公開レジャーを使うことになるのかもしれない。引き続きリサーチを進めたい。
最後は、No Trsut なブロックチェーンに、当事者しかわからない取引を形成するものである。インターネットでいうと、VPNに相当するものと考えて良い。これが、図の右上に相当するものである。
果たして、このようなものが構成できるのかということだが、理論的には可能である。”Enigma: Decentralized Computation Platform with Guaranteed Privacy”という論文に基礎的な方向性が示されておりこれを元にしたEnigmaプロジェクトが立ち上がった。
EthereumのVitrik Buterinも、すでに昨年に実装のアイデアをブログに公開している。Secret Sharing DAOsと名付けられており、Etheruem上で同様のものを構成するアイデアについて述べている。
これにより、個人の医療記録や、鍵の預託、レピュテーションシステムほか、秘密を要する金融ネットワークなどを、暗号通貨の基盤の上に構築することができるとしている。
<リンク>
Hyper Ledger 法人むけ分散型レジャー
“Enigma: Decentralized Computation Platform with Guaranteed Privacy” Guy Zyskind, Oz Nathan, Alex ’Sandy’ Pentland (2015)
Secret Sharing DAO by Vitarik Buterin