レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)
ちょっとしたメモ的エントリですが、業界の流れを考える上でヒントになるとおもいます。
上記のマトリクスは、コンセンサスアルゴリズムと、チェーンの用途で4つに区切ったものです。
PoWは遅いが堅牢性があるといわれ、POSは早いが中央集権的になるという違いが有ります。
さて、PoWは、マネーとしての用途に向いています。堅牢であり、非中央集権です。その代わり遅く、電気代もかかりエコではないのですが、逆にそこがセキュリティの要になります。スケールがしづらいため、ビッググロックという形でBCHがフォークしました。
速度や利便性を競ったマネーとして、数々の「草コイン」がうまれました。それが右上の象限にあたります。草コインの多くがPoSを採用し、短いブロックタイムや即時決済を謳い、多くの新機能を搭載していますが、マネーとして見た場合、成功していません。マネーにおいては信用が大事なので、セキュリティなどが重視されるからでしょう。
同様にPoWでスマートコントラクトを構築したイーサリアムは、現在まで快進撃をつづけてきましたが、ビットコインと同様にスケーラビリティの限界に達しています。手数料も高騰し、機能していません。セカンドレイヤーを模索すると同時に、チェーン自体をPOS(PBFT型)に移行して根本的なスケーリングを考えています。
ダークホースはEOSでした。EOSは、PBFTを採用し秒間数千トランザクションという速度を達成しています。しかし、承認をするバリデータのノードは僅かに20いくつと、中央集権的という批判があります。
速度と分散性にはトレードオフがあるのは以前からシラれていましたが、どうやらスマートコントラクトの利用者にとっては分散性はほどほどにあればよく、むしろ速度や手数料のやすさという実用性のほうに目が向いています。イーサリアムが遅く、コストが高ければ、EOSを使えば良いといえます。
CosmosのTendermintも新規性のあるPBFTで、秒間5000〜10,000/txが出るといわれています。さらにヴァリデータノードも200ノード程度で可能で、ブロックタイムも6-8秒を達成しています。
こうしたスマコンプラットフォームでは速度競争が加速するでしょう。
こうしてみたときに、各象限のながれを書きます。端的にいうと、左上と右下がより強みを増すのではという考えです。
左上 POW+マネー
ビットコインは、PoWとマネーという不動の位置を狙い続け、ETFなどを通して資産としての地位を狙うでしょう。スケーラビリティは落ちますが、スケールしなくてもこの地位は確保できるからです。セカンドレイヤーがうまく行って支払いにも使えるようになれば最強です。
匿名通貨はその中でも独特の価値を保ち残るでしょう。
BCHは、ブロックサイズを増やすスケーリングという独自の方向でこの領域を攻めています。しかし最近の議論をみると、軸がブレ始めているきもしていて、中途半端にスマコン機能をとりいれようとしています。すると、左下の象限に移動するのですが、そうするとイーサリアムのジレンマに陥ります。PoSの導入やブロックタイムの短縮みたいな話もあるようですが、そうやって右上に移動すると、草コイン化します。BCHのポジション舵取りが注目されます。
右上 POS+マネー
この領域は死んでいくでしょう。すでに詐欺師しかいません。
もちろん草コインは生まれ続けますし、それで遊ぶマネーゲーマーもいますが、多くの関心はスマコンプラットフォームに移りました。スマコン機能を取り入れて再生を目指すコインは、右下を目指します。
ただし、これら草コインで導入されているPOSをは、性能の低い素朴なPOSです。EOSやTendermint(Cosmos)などは、PBFTの上に作られたPOSであり、同じPOSでも技術が基本的に違います。の数千tx/sは出ませんので、根本的な部分で異なります。
左下 POW+スマコン
このコンビも成り立たないのではというのが仮説です。速度や利便性を求めるスマコンにおいては、PoWはコストフルです。スマコンにおいては根本的な矛盾が有り、コインの価格が上がると、プラットフォーム自体の利用が高くなってしまい、単なるスマコン処理の依頼という点では、他の手数料が安い新規プラットフォームに移動したほうが合理的だからです(イーサリアムのジレンマ)
ごく稀に、極めてセキュリティを重視したコントラクトが求められることがあるかもしれませんが、ニッチ需要です。ニッチ需要のために、最もコストをかける(セキュリティの高い)チェーンが維持できるかは疑問です。
右下 POS(PBFT)+スマコン
スマコンプラットフォームは、高速で手数料が安いこの手のものが主流になるでしょう。イーサリアムもCasperの導入で最終的にこの象限に移動しようとしています。
パブリックなバリデータによるPBFTというのは新しい試みで、これにより数千〜数万tx/sの性能と、数秒のブロックタイムが実証できれば、スマートコントラクトは実用化できる可能性が有ります。
この分野ではEOSや、Tendermint(Cosmos)があり、他のプラットフォームも立ち上がりつつ有ります。来年はこの領域に最も注目がいくはずです。
なお当然、分散性とのトレードオフが存在します。PBFTでは、バリデータノードの数がふえると指数関数的にコンセンサスがむずかしくなります。現在EOSはでは20程度、Tendermint(Cosmos)では200程度です。
分散性と利便性とのトレードオフがこの領域で模索されるとおもわれますが、しかしながら、その落とし所は、この象限の範囲になるでしょう。左下の象限には落ちないはずです。
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