レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)
詐欺的なICOが横行しており、なんのプロダクトもださずお金だけ集めている、といった批判が世間に認識されてきました。これに対して「ICOから消費者を保護せよ。厳しく規制せよ」という論調が生まれています。
「消費者保護か、イノベーションの保護か?」という間で着地点を探っているように思えますが、このアジェンダ自体が間違っていないでしょうか?
ICOにおいては消費者は善良で保護すべきものという考えは改めるべきです。本当に規制すべきは、節操のない消費者のほうで、まずそれらの市場アクセスを限定すべきと思います。
つまり悪質なICO からどう消費者を守るかというアジェンダが間違いで、むしろ節操のない消費者(投資家)からどうICOとイノベーションを守るかが 本当の論点だ
ということを本稿ではお話します。
投資家はそもそもプロダクトの有無など気にしていません。技術などどうでもよく、プロダクトも実際にできるかどうかを気にしている人は皆無です。そのプロダクトを実際に利用するためにコインを購入しているわけではありませんから、できようができまいが、はじめから関心がないのです。
それよりも関心事は、ICOの主催者が如何にマーケティングに長けているかどうかです。たいした提携でもないのに誇張してプレスリリースを出したり、もったいぶった発表をしたり、カウントダウンをして市場に材料を投下してくれるような運営です。当然そのタイミングで運営が売り抜けたりしているわけですが、それに対しての怒りの声は投資家から聞きません。むしろ歓迎されています。
まっとうな投資家ならこうした価格操作行為を嫌いますが、節操のない投資家は価格操作が大好きです。なぜなら自分たちもICOで購入したコインを、同じタイミングで売り逃げしようと思ってるからです。自分たちも価格操作に便乗できると考え、不正行為を熱烈に歓迎します。節操のない投資家はいわば悪質なICOの主催者と共犯の関係です。
このような投資家にとっては、プロダクトの有無などどうでもいいのは当たり前で、プロジェクトが詐欺であるかどうかすら気にしていません。むしろ、はじめから詐欺であっても、自分が便乗して儲けることができればそれでよいと考えています。
アンケートを取りましたが、そのようなスタンスの投資家が多数派を占めます。当の投資家こそが、悪質なICOの存在を切望しているのです。
これが行き着く先は市場の信任の崩壊です。仮想通貨の市場は、先行して仕込んだ投資家の利確のためだけになり、如何にババを引くカモをつれてくるかのゲームになってしまいます。それは市場全体が詐欺の場になることを意味し、市場には永続性が生まれません。
ではどのようにすればよいでしょうか?
当然、ICO側への規制は必要です。しかしながらあまりにこれを厳しくすると、イノベーションの目もつぶしてしまいます。
私は、取り急ぎ必要なのは投資家(消費者)側への規制とおもいます。具体的には、販売の規制です。ICOでは、リテラシーや資産の要件をみたした適格投資家のみにまず販売し、一般の投資家へは金額上限を設けるなど限定的に販売すべきでしょう。
具体的には、次のようになるでしょう。
プレセール: 適格投資家のみへの販売。純金融資産が3億円以上か、年収3000万以上を2年継続しているひと。投資経験5年以上。金額制限なし。本人確認および書面の提出などを要する。(※金額要件は実例)
一般セール: 一般の個人投資家に販売。一人あたり10万円などの金額制限を設ける。本人確認などは不要とする。購入に際しては、簡単なフィルタリング(アンケート)を実施し、理解の確認が必要。
実際に、世界的な潮流では、まっとうなICOであれば上記のような2段階の方式をとる流れになってきているように思います。
現状、プレセールでの要件は徐々に取り入れられつつありますが、一般セールでの金額制限まで踏み込んでいるところはまだ少ないように思います。
さてこうすると、ICOの特徴である誰でも参加できる権利みたなものが阻害されるという反論がかならずあります。しかし、投資アクセスの平等性という権利ははじめから保証された権利でもなんでもありませんし、試しにみんなが参加できるようにしてみたらこうなったわけで、自分の首をしめてしまったのは節操のない投資家のほうです。優先順位をつければ、守るべきはイノベーションであって、投資アクセスの平等性よりも、イノベーションを守るほうが遥かに大事です。
こういう規制が敷かれると、投資家としては、規制をあからさまに無視する悪質なICOに手をだすひともいるかもしれません。つまり最初から詐欺の匂いがプンプン醸っているICOです。もうその域になると、投資家がすっからかんになったところで、政府は気にする必要も、救済をする必要もないかとおもいます。それに手を出す投資家は極めつけに節操がない人しか残っていないからです。それこそ自己責任です。
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