ビットコインによるマイクロペイメント事例考察ー1秒単位の動画課金Streamium

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)

ビットコインによるマイクロペイメントの事例考察。

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https://streamium.io

今年の初夏にベータ版がローンチしたStreamiumは、P2P型の動画配信サービスで、ビットコインによる少額課金ができ、従来の課金システムとは全く違う方式を実現しており、革命的だ。

ご存知の通り10分のブロックタイムの制限があるビットコインであるが、Streamumが実装したプロトコルは、ビットコイン上で1秒単位のマイクロペイメントが可能になる。しかも間に立つ人は不要で、2者だけで1秒単位での課金を実現する。極めて画期的だ。

Streamiumのサービスを簡単に説明すると、ユーザーがチャネルをつくりライブ動画を配信する。ユーザーは一時間あたりの視聴料を任意に設定でき、視聴者はその料金をビットコインで支払う。その際には、見ただけの時間が課金され、1秒単位の課金が行われる。

<まとめと応用>

Streamiumの特徴をまとめると、

・動画はVPNを通して配信され、配信者と視聴者だけのあいだでのみやりとりされる。通信の秘密は秘匿される

・マイクロ課金ができ、課金は中央サーバーを通さず、相対で実現する。

・ビットコインのブロックタイム10分にかかわらず、1秒単位で課金が確定する

以上の特質から、当初、次のような利用用途を想定している。

・レッスン(語学や、音楽レッスン、その他個人的な指導)

・オンデマンドムービー(時間単位の課金のコンテンツ配信)

・コンサルティングやサポート(オンラインのコンサルティング、セラピーや、問題解決)

・授業(オンライン課金の教育コンテンツの配信)

・ポッドキャストなど

<実際に使ってみる>

実際に使って、どのようなしくみで動くのかを検証した結果を紹介する。

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https://streamium.io

にアクセスする。ここで放送を開始することができる。きわめて単純で、①チャネルの名前、②支払い受け取りのビットコインアドレス、③時間あたりの視聴料、の3つを指定してクリックするだけでOKだ。

すると、視聴者むけのURLも出てくるので、このURLを告知するなどする。

 

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視聴者はチャネルのURLをクリックする。動画に入る前に、このような料金の説明と支払い画面が出てくる。

この場合、視聴料は一時間2ドル。動画を見る前に、前払いが必要だ。60分見る予定であれば、まず60分の料金を前払いする。途中でやめた場合、残りは戻ってくる。

指定されたビットコインアドレスに料金(2.02ドル)を送ると、すぐに視聴画面に遷移する。なお、0.02ドルは、トランザクション生成のためのビットコイン手数料で、サービス側の取り分ではないとおもわれる。

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こちらが視聴画面。左下に、前払いの金額であとどのくらい視聴できるかが表示される。(3512秒)

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これが、放送している方の画面。放送者は、何人が視聴しているか、どのくらいの視聴料が稼げたかがわかる。1秒単位で課金なので、1秒毎に視聴料が変わる。リアルタイムで稼げているのがわかる。

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視聴者は、いつでも視聴をやめることができる。この場合60分2ドルで視聴をはじめたが、0.35ドル分のところで視聴をやめた。残りの1.61ドルは、支払い元のビットコインアドレスに返金される。

返金トランザクションの詳細とともに、返金が明示される。

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こちらは、配信側の画面。配信を終了すると、その配信でいくら稼げたかが表示され、支払いのトランザクションが明示される。

<テクニカル:トランザクションを追う>

上記が簡単な利用方法だが、なぜ10分のブロックタイムのビットコイン上で、1秒単位の課金ができるのであろうか?技術的なところ(トランザクション)を追ってみよう。

Streamiumは「マイクロペイメントチャネル」の実装である。

マイクロペイメントチャネルとは、支払者と受取者のあいだで、両者専用のデポジットアドレス(マルチシグ)を作り、支払者がそこにある程度のビットコインを前払いをしておいて、後に精算する方法だ。

利用されているアドレスをもとに、トランザクションを追跡してみた。

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まず、視聴者が前払いをした画面。ブロックチェーンによれば、前払いの直後、そのコインは、マルチシグのエスクローアドレスに送金されている。

このアドレスは、相手のブラウザとこちらのブラウザが通信した結果生成された一時的なアドレスであり、中央サーバーの保有するものではない。このアドレスのプライベートキーは、お互いのブラウザが一時的に保有する形のようだ。

途中でリロードするなどすると再接続できなくなるなど、いくつかの問題があるようで、開発者は実装を改めるとしている[1]

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その後、視聴が終わったあとの精算トランザクションである。

マルチシグのアドレスから、配信者のアドレスと、視聴者のアドレスに送金があり、精算が行われている。

マイクロペイメントチャネルのプロトコルが正しく実装されていれば、この精算トランザクションは、最後に作られるのではなく、視聴一秒毎にブラウザ同士が精算トランザクションを作成・更新して、お互いにサインをしているはずである(ブロードキャストはしない)。

これにより、途中でどちらかが放送や視聴を打ち切った場合でも、その時点までのトランザクションが常に確定していることになる(重要)。

どちらかが途中でトンズラしても、先のトランザクションをどちらかがブロードキャストすることにより精算が確定する。

<まとめ>

現在では、まだ最低限の機能が動くという段階ではあるが、マイクロペイメントチャネルによるP2P支払いの最初の実装例として、きわめて先駆的な試みであると考えられる。

今後、マイクロペイメントチャネルを実装した、支払いシステムが多くの分野で実験されることになるはずである。

[1] https://np.reddit.com/r/Streamium/comments/378xxy/announcement_updates_to_streamium/

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