許可制ブロックチェーンと、中間通貨の役割について

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中間通貨について、再び考えてみた。ほとんどつらつらと仮説を書いたものなので、長文かつ読みづらいかもしれないので、興味がある方向けとする。

中間通貨としては、現在のハードカレンシーであるUSD、そして暗号通貨同士の基軸通貨であるUSD、それからrippleのXRPなどがある。

最近、ブロックチェーン系の話題を追ってみると、とにかくやたらと、permissioned blockchainの話題が多い。

これは、許可制ブロックチェーンという意味で、要するに、誰もがマイニングできたり、自由に接続できるものではなく、限られたひとのコントロール下にあるブロックチェーンという意味だ。

銀行などの金融機関の関心はもっぱら、レジャーシステム、それも、自分たちでコントロール可能な、パーミッションレジャーにある。具体的にいうと、rippleに関心がある。

通貨としての機能は、まったく関心がない。ビットコインには関心がまったくない。これは、当たり前で、価値の保存や尺度としての機能は、日本円なり、自分たちの究極の(ヴァーチャル通貨としての)自行のIOUがあるからだろう。

さて、このパーミッション・レジャーという発想は有用なのだろうか?ようするに、イントラネットである。

おそらく、パーミッションな仲間たちの間では、きわめて有用だとおもわれる。パーミッションな仲間というのは、つまり、日本であれば、日本の金融監督庁のもとで、同じ規制をうけていて、それなりに信頼できる銀行同士である。

つまり、現状も、そういう銀行同士が、日銀ネットにつながっている。もちろん、その間でも、銀行が倒産してしまうと、決済ができなくなるので、積立金をつんで、バッチではなく、リアルタイムに近い処理を導入して、カウターパーティーリスクを避けようというのが基本的な動きだ。

たとえば、日本の日銀ネットに参加している銀行が、共通のパーミッションレジャーシステムを導入し、それぞれが認証しあうというネットを考えよう。たとえば100銀行があったとして、95銀行がOKならそのトランザクションは認証されるといった認証方式で、参加者が限定される。

この、新日銀ネットは機能するだろうか?カウンターパーティーリスクはなくなるのだろうか?

Yesでもあり、Noでもある。ひとつYesなのは、決済にかかる時間が短縮されほぼ瞬時で、その時点で完全にセトルメントするなら、ほぼカウンターパーティーリスクはなくなったといえる。

認証者も許可された100銀行だけなので、それが十分政府によって規制されて、まともな行動をとれば、51%アタックのような内部アタックはないだろう。

こうした内輪のレジャーシステムは合理的だ。このとき、価値の交換はどうするか。お互いのIOUを等価とみとめる約束事をすれば、お互いにIOUを直接交換し合えば良い。もしくは中央IOUをつくってもよい。日銀が参加するなら、ストレートに、日銀IOUをつくってしまえばよく、それをハブ通貨として、決済すればよい。

日銀がやらないなら、銀行100社の間だけで認め合う、中間ハブ通貨を作ってそれを日本円と固定レートにして適当な数だけ発行すればよいだろう。各銀行のIOUはその中間ハブ通貨との交換性を保てば良い。

この中間通貨とネットワークはセキュリティは、参加銀行が責任をもって維持管理する。参加は、許可制で、外部者は接続できない。銀行の外にはこれらの中間通貨は持ちだされたりとか、交換されない。

国際決済の場合はどうだろうか?

結局は、国際決済といっても、USDなり、JPYなど、それぞれの通貨ごとに中央銀行で振り替えているだけである。USDであれば、最終的にはFedの振替になる。

コルレス銀行も使われているが、それはカンボジアとかの小さい銀行が接続する場合で、大手同士は直接FEDなり、日銀などに口座があり、中央銀行決済をする方向性だと聞き及んでいる。

しかし、swift なりの指示が複雑怪奇で、確認にも時間がかかるので、カウンターパーティーリスクが増す。

もし、fedなり、日銀が、それぞれコンセンサスレジャーシステムを導入して、Fed-IOU(USD)高速化して、ほぼ即時のセトルメントが可能になれば、国際決済でも、同様の仕組みでOKなはずである。

もちろんこれは、かなりの空想で、こんなに置き換わるわけではない。

最初は、特定の一部分の金融機関だけが参加して、しかも通貨が違うということが想定される。そういう場合は、例えば、価値の尺度として、たとえばUSDを採用して、USDの一定の預託のもとに、USDにペッグした中間通貨を仲間内で発行する。それを利用して送金などを行えばよい。

銀行がこのように許可制のレジャーを使う場合で、中間通貨をもうける場合は、おそらく独自の中間通貨を独自に制定するだろう。ビットコインのような、自分たちでコントロールできないものは信頼しないし、採用しないだろう。同じ議論で、XRPも性質上、許可制のネットワークでは利用できない(注)。

もし、銀行が、ハブ通貨が必要で、それを作るなら、銀行自らが、自分たちで作るだろう。価格も発行量もコントロールできた方がいいし、というか、価値の尺度という意味では、自国通貨にペッグした固定価格の方がいいだろう。

しかし、結局これでは、現在の法定通貨と同じくくりで、JPYハブ通貨圏なり、USDハブ通貨圏なり、もしくは、さらにソレ以下のミニハブ通貨圏がたくさんできる。

そのとき、ハブ通貨とハブ通貨はどうやって交換するのか?先ほどのように、国際決済となると、行き詰まる。結局なにかのハードカレンシーを使わざる得ない。現状は、USDなり、EURなりであり、アメリカの通貨を信頼し、アメリカ中央銀行で決済するのは、ましな解決策である。

結局は、中間通貨の議論は、必要に応じて、それぞれが信頼とリスクの範囲で採用をきめることになるだろう。

では、代わりに、ビットコインはどうか。XRPよりはマシであろうが、銀行がビットコインを信頼するほどには、到底、至っていない。ビットコインは、昨今、スケーラビリティの議論がつづいているが、存在意義を考えれば、ハードカレンシーの代替として、究極のセキュリティを目指す方向にならざるえないだろう。そうでなければ意味が無い。カウンターパーティーリスクのないハブ通貨として立ち位置が、ビットコインの存在意義と価値だろう。ビットコインは、Store of Valueとハードカレンシーとして、Ultimate Securityを目指し、それ以外のレジャーシステムは通貨を廃して高速なセトルメントとして、VISAやPaypalと競合するだろう。価値の保存は、ローカル圏では、法定通貨がこれからも地位を保つだろう。

どこの範囲まで、パーミッション仲間を増やして、どこまで信頼するか、そしてその場合のリスクはどうなるのか?利便性、セキュリティリスク、スケーラビリティなどのトレードオフとなる。

[1] “Specifically, R3 highlighted its belief that if more than 20% of Ripple’s network nodes do not agree, the system’s ledger would effectively fork. ” (http://www.coindesk.com/report-conflict-ripple-labs-consensus-protocol/)

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