BCHハッシュウォーから何を学ぶか?

レポート「アルトコイン図鑑」では30種類以上のコインの概要と見通しを解説(詳しく)

Selection_009

ビットコインキャッシュのハードフォークが終了しました。私の予想どおり、チェーンは互換性のない2つのチェーンに分岐しました。

互換性がないので、再編成も起こらず、今後もどちらかに統合されることはないでしょう。チェーンの分裂が恒久的になりました。それに伴い、コインも2つに分裂しました。

今回の件は、パブリックチェーンのガバナンスに関して、大きな教訓を与えてくれたとおもいます。本記事は、ハッシュウォーから何を学ぶのか、学んだのか?について私の意見をまとめます。

そもそもビットコインキャッシュのガバナンスの憲法は、

「1つの開発チームが独占開発する(BTCのようなガバナンス)は悪だ。複数の開発チームが独自に機能を実装する自由競争を是とし、互いの仕様が矛盾した場合、ハッシュウォーを実施して、最も大きなハッシュ支持があった提案だけが生き残ることとし、我々はソフトウェアをアップデートしていく」※1

というものでした。ビッグブロック主義に加え、ハッシュがすべてを決めるというガバナンス思想は、他のコインにはない最大の特徴だといえましょう。

今回のハッシュウォーはまさにそのガバナンスが機能するかどうかが問われたのです。

結果は、機能しませんでした。チェーンは2つに分裂し、2つのコインが生まれただけでした。

敵対的なHFは2つのコインに分裂して終わる、というセオリーのほうが正しかったと証明されたといえます。

これにより、今後のビットコインキャッシュ勢は、ガバナンスの方法を根本的に見直していく必要があろうかと思います。

今後も、相変わらず複数実装、ハッシュ投票というようなことを言い続けるならば、再びの分裂は避けられず、その後も、どこまでも分裂していくだけでしょう。

もうひとつの重要な教訓は、取引所の対応です。

事前の見通しでは、ハッシュウォーの行方をみて、どちらをBCHにするかを決めるという対応がされると見ていました。もしくは、ABC側をBCHとしたうえで、新たにSVコインを付与すると考えられていました。

ところが、Bainaceは、「BCH」というティッカーを廃止してしまいました。そのかわり、BCHABCと、BCHSVという2つのコインを新しく上場させる、という扱いになったのです。※2

CEOのCZ氏がコメントしていましたが、今後の状況にかかわらず、「ティッカーをあとから変更するつもりはない」としています※3

おそらくですが、過去のある時点でどのティッカーが何の資産を指していたのか明確にする、というような原則に従ったのでしょう。

たしかに、取引所の運営や法令上、ユーザーが何を取引しているのかを明確にしなければいけないのは間違いないことであり、コイン内部の事情よりもそれが優先されたといえます。

この扱いは合理的です。ハッシュウォーの行方をみて、どちらをBCHにするかを決めるというより、合理的です。

BCHに関して世界最大の取引量をもつBinanceの決定は大きく、今後もこのスタンダードが踏襲されるでしょう。

つまり、2つの陣営がひとつのコイン名をめぐって争った場合、どちらかが正統とか、そういう主張にかかわらず、容赦なく取引所がコインの名前を2つに分ける、ということが慣習になったのです。

この取引所の扱いは、名称をめぐって宗教戦争をおこなっている両陣営にとっては、痛恨の極みといえます。もうビットコインキャッシュは存在せず、ビットコインキャッシュABCと、ビットコイン・キャッシュSVだけが残るからです。

仮に今後どちらかがゴミコインになって実質上なくなったとしても、過去のある時点でどのティッカーが何の資産を指していたのか明確にするという原則にのっとれば、名称が元に戻ることはないと言えます。

最後に。

今回の内紛は、取引所や、ウォレット、ユーザー、投資家といったエコシステムを全く無視して、コイン内部の支持者だけの都合で行われました。

多大な混乱を各所にもたらし、予測のつかない価格形成を投資家にもたらし、最終的に2つの陣営が手に入れたものとはなんだったのでしょうか。

次にこのような混乱があれば、ユーザーは見放すでしょうし、すでにもう見放してしまったユーザーは戻ってきません。

さらには、ユーザーだけではなく、取引所がサポートしなくなるかもしれません。

つまり、投資家保護の観点からみると、価格形成の不透明さだけではなく、送金・入出金やウォレット構築などの技術的な観点からいっても、ハッシュウォーをガバナンスの方法として積極的に容認しているコインについては、取り扱いに質疑がつく可能性は否めません。日本においては、両コインともに再審査というようなことにならないよう祈ります。

今後、分裂した2つのコインが今回の内紛から学びを得て、よりよいガバナンスを構築されることを切にねがっています。

以上です。

※1
ハッシュウォーの定義ですが、リプレイプロテクションをつけずに、お互いのコインの正当性を主張した陣営が、ハッシュを競うといったものです。リプレイプロテクションの有無がハッシュウォーなのか、そうでないのかを決定する最も重要な点です。

※2
ただしこのポリシーは、リプレイプロテクションがないハッシュウォーの場合のみと考えられる。リプレイプロテクションありで分離する場合は、分離側が明確なため、元のコインのティッカーは保たれ、分離コインが新たに付与されると考えるのが妥当である。前者と後者は明確に区別して議論しないといけない。前者がメジャーコインで起こったのは始めてであり、これが本来の「分裂」である。後者は分裂ではなく「分離」と表現すべきと考える。

※3

 

 

・おしらせ
ビットコイン研究所の有料版サロンでは、平易な言葉で最近の技術や業界事情などについて解説するレポートを毎週配信しています。

暗号通貨について、もっと知りたい、勉強をしたいというかたに情報を提供しています。サロン内では疑問点も質問できます。

一度登録いただけると100本以上の過去レポートが読み放題で、大変お得です。レポート一覧がこちらのページありますので、よろしければいちど目をとおしてみてください。
(詳細情報)

Ledger Nano S - The secure hardware wallet