「日本」のビットコインは遅れているのか否か?

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「日本」のビットコインは遅れているのか否か?という話が議論になっている。

マスコミなどは、日本はおくれているという論調が多いようだが、現場ではそうではない、という反論がある。

実際はどうなのだろうか?

進んでいるところ、遅れているところは入れ混ざっているので、それについてコメントしたい。

まず日本ということだが、「日本」=日本国政府。「日本人」=「日本で生まれた日本民族の人間で日本国籍を有し、外見が典型的な日本人といわれるものに合致する人種」というワーディングですすめる。それが一般的な理解だからだろう[1]。

<政府の取り組み>

まず日本国政府の取り組みだが、これは進んでいる。

FATAFからの外圧とはいえ、結果として、仮想通貨について明確に定義した法律が制定された国は殆ど無く、間違いなく進んでいる。(なお法律自体が、緩いというわけではない)。

一方、消費税の問題がある。仮想通貨に消費税をかけているのは日本くらいで、ここにおいては、遅れている。

また、産業振興という観点からは、経済産業省がブロックチェーンの研究を始めたり、日銀が言及したりと、概ねポジティブなスタンスである。

アメリカにおいてはNY州以外には明確な法律がまだなく、またNY州に至っては厳しすぎる法律になっており、むしろ事業活動はアメリカにおいて著しく制限されている。

他の法律もクリアしないといけないため、下手をすると50州でそれぞれに免許を取得する必要があり、それだけで20億やそこらの費用がかかるという。

米国に取引所が少ないのは、政府の規制がガチガチだからである。

<ユーザー>

取引所は4つも5つも6つもあり、世界でもこれだけ沢山ある国は珍しいので、進んでいるといえる。

取引高も、アメリカを抜き、中国についで2位になった。

ただし、取引所の出来高は、取引手数料がゼロであることから、自動取引による売買が多くを占めていると見られ(中国と同様)、単純に数字を比較するのは難しいので注意は必要だろう。

より現実を反映した指標としては、顧客の預かり資産や、入金額といった別の指標を使うべきだ(が、これらは公開されにくい)。

ユーザー層だが、最近は、ネット民を中心に、独自の文化をもつ暗号通貨ユーザー層が形成されつつあり、強いと思う。

また、仮想通貨の詐欺は日本は進んでいる。価値の無いコインを情弱に売りつけるビジネスはたゆまなく行われていて花盛りだ。

一方で、日本在住の外国人コミュニティは強い。ロジャー・ヴィアを筆頭として、ビットコイン界隈では有名で、コアなコミュニティに出入りしている人物が、何名か日本に住んでおり、世界のビットコイナーも日本によく立ち寄っている。

東京で開催されているビットコインミートアップ[2]は、世界で2番めに古いものであり、累積の開催数は世界で一番多い。

在住外国人コミュニティは、世界のトップレベルである。

<ベンチャー>

ベンチャーにおいては、評価は難しい。そもそも、ベンチャーのエコシステム自体が、日本はアメリカと比べたら規模はおよそ1/10くらいであり、全体としては遅れているのは間違いない。

その遅れたなかでビットコインがどうか?というと、取引所が4,5社、エンタープライズ向けブロックチェーンのソリューションが数社あり、1/10の規模のベンチャーシステムの中では、ビットコインは目立っているといえよう。

先日ビットフライヤーが30億円を調達しており、これは世界のビットコイン業界でも有数の調達額である。

一方でよく言われることだが、日本では、アプリやマーケティング、インテグレーションサービスは強いが、基盤技術の開発ベンチャーは少ないという指摘だ。ビットコインにおいてもこれは当てはまる。

日本の、多くのビットコインビジネスは取引所である。米国は、むしろ規制が厳しすぎて取引所があまりなく、それ以外のベンチャーのほうが多いと考えられる。

<ブロックチェーン>

また、ビットコインではなく、ブロックチェーンなら、ということで、企業内のシステムへ分散型台帳を応用する取り組みが盛んだ。

これも世界的な現象で、現在はビットコインは下火で、ブロックチェーンが流行っている。

日本でも、ブロックチェーンを実験することに関してはノーリスクであるから、非常に盛んになっているように見える。実験の数や、やっていることに対しては、日本は他国と同じくらいの取り組みがされているようだが、企業秘密で公開されないので、実際何をやっているかは、よくわからない。これは米国の企業内の取り組みも同様で、プレスリリースの数は多いが、実態はよくわからない。

<技術者、人材>

これは層は薄い。ビットコインの各種プロジェクト(コア、Segwit、ライトニングネットワーク)などにおいて、これらに参加してコードで貢献している日本人の数は知る限りゼロである。

プロジェクトへの参加者では圧倒的に米国とヨーロッパが多い。つまり、基礎の技術開発における人材においては、数も、厚みも、かなりの差があるのは否めない。

ただ、これも他の分野でも同様なので、ビットコインだけが遅れているかというとそうでもないともいえる。多分や同様に遅れているといえる。

なお、在京の外国人ビットコイナーの中には、強力なひとも存在する。あまり知られていないが、ビットコインのコア開発者の一人が東京在住だ。ほかの在住外国人の技術レベルはトップレベルである。

そもそもの話だが、ユーザーや消費は、国内・海外といった具合に地理的にくくれるが、このような技術開発は、国内・海外を分けるいみがまったくない。つまり、日本だけが進むといったことも意味がなく、すでにコアのコミュニティはグローバルで誰でも参加でき、米国ほかヨーロッパ勢も沢山参加しているのだから、そのなかに入って活躍すればよい。

<結論>

結局、日本民族の傾向は、ビットコインにおいても、他のハイテクやITやネットの分野で起きていることは、あまり傾向が変わらない。

つまり、主に国内向けや、アプリ、マーケティングサービスは活発で、企業数やユーザー、時価総額などでは有数に育っている。一方、国際的な技術コミュニティへの食い込みは弱いといった傾向だ。

これをもって、(基礎技術が)遅れているという見かたもあれば、(市場は)遅れてないという見かたもあるだろう。(実装技術も遅れてないともえいえよう)

これが日本民族の大局的な傾向だと思う。ビットコインにおいても、大局的にいって同じ傾向である。

ただ、いくつか違いをあげるとすれば、2点違いがある。

・他分野では後手になりがちだった法律が最初にできた

・日本在住の外国人はなぜかトップレベルだ。大和民族の・・ではなく、東京地域の・・とすれば、東京地域のビットコインのレベルは世界有数である。

といったところだろうか。以上が私の視点である。

なお、個別のベンチャーの活動単位でみれば、ある企業のプロダクトが、世界で初めてみたいなのものは、もちろんあるとおもう。それは理解しているので、本記事を攻めないで欲しい。

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[1] 決してこのククリに同意しているわけでもなく、日本民族だけの活躍をもって日本が・・というのは意味が無いと思う。

究極に考えれば、税収が問題なのであって、民族が誰であれ日本国政府に税収をもたらす産業振興がベストなはずである。よく言われることだが、シリコンバレーの起業は、米国人以外も多い。

この記事によれば、10億ドル以上の価値がすでにあるユニコーンの半数以上が、外国人による創業だという。

シリコンバレーの強さは、米国人にあるのではなく、このエコシステムにあるのだということは有名な話だが、「日本のXX」となるとこれを忘れてしまう人が多いらしい。

[2] 東京ビットコイン会議。主催者は日本人の宍戸健さん

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